銀河巡航船アステリア号と旅立ちの時
修行空間から戻ったヤマトを前に、長老セラフィオンは静かに佇んでいた。
その背後には、アリオンが腕を組んで立っている。
セラフィオンは、ゆっくりとアリオンへ向き直った。
「アリオン。ヤマトの精神修養は、これで終わりだ」
アリオンは深く頷く。
その表情には、師から重大な任務を託された者の覚悟が宿っていた。
「これから先は、お前が導け。ヤマトは第4密度へと上昇した。
次に必要なのは、本格的な銀河への“旅立ち”だ」セラフィオンの声は穏やかで、しかし、揺るぎない。
「じゃあの。ヤマト! 銀河を楽しめ!」
「師匠、ありがとうございました」
ヤマトは、セラフィオンに深々と頭を下げた。
アリオンは一歩前に出て、ヤマトの前に立った。
「ヤマト」
アリオンの声は、どこか誇らしげだった。
「アステリア号が完成した。これは、君の船だ」
ヤマトは息を呑む。
自分の船──その言葉の重さが胸に響く。
アリオンは続けた。
「今日から、君は、この船の艦長(キャプテン)だ。私は同船しない。
だが、レイラが副長として、君を支える」レイラが静かに微笑む。
その瞳には、深い信頼が宿っていた。
「そして、船の扱いは、これから、カイがレクチャーする。
彼は技術の天才だ。安心したまえ」カイは軽く手を挙げ、にやりと笑った。
「よろしくな、ヤマト。
この船は、お前さんのために調整してある」アリオンは、ヤマトの肩に手を置いた。
「ヤマト。これは、ただの船ではない。
君の“使命”を運ぶ器だ」その言葉を残し、アリオンは静かにその場を去った。
「感謝します。アリオン隊長」
ヤマトは、隊長の背中が光の中に消えていくのを見つめていた。
カイが、ヤマトを船内に案内しながら説明を始める。
「まずは、船の概要と構造からだ。
アステリア号には、最新型のAIが搭載されている。
航行、環境維持、分析──ほとんどはオートメーションだ」ヤマトは、船内のハイテク装備に圧倒されていた。
白と青を基調とした空間は、どこか生き物の内部のように滑らかで、
壁面には柔らかな光が流れている。「ただし、バブル・ジャンプだけは別だ」
カイは振り返る。
「これは、レイラ副長がサポートしないとできない。
密度の調整が必要だからな」レイラが補足する。
「ヤマト、あなたの密度は、第4密度に上昇したばかり。
ジャンプの制御は、私がサポートするわ」ヤマトは深く頷いた。
カイは、操作パネルを指しながら言う。
「それから──重要なことがある。
第5密度のType Ⅳ文明技術は封印(ロック)されている」ヤマトは眉をひそめた。
「封印(ロック)……?」
「そうだ」
カイは真剣な表情になる。
「もし、この技術が他文明に流出すれば、必ず戦争に転用される。
それらを兵器として使えば、銀河が崩壊する危険がある。
だから、アステリア号の機能は、“あえて”グレードダウンされている」ヤマトは理解した。
「……銀河の秩序を守るためか」
「その通りだ」
カイは頷く。
「そして、お前さんが、扱える密度に合わせるためでもある。
第4密度に覚醒したばかりのお前さんには、Type Ⅳ技術はまだ早い」ヤマトは胸に手を当てた。
自分の成長と限界を、静かに受け止める。
レイラがヤマトの前に立つ。
「ヤマト。私はあなたの副長として同船する。
銀河航行、ワープ・ジャンプ──などは、私がサポートするわ」ヤマトは深く頭を下げた。
「レイラ副長……頼りにしてるよ」
レイラは微笑む。
「任せて。あなたは艦長として、進むべき方向を示して」
全ての準備が整った。
アステリア号のブリッジの扉が開き、ヤマトは艦長席に座る。
胸の奥で、静かにメルカバが回転する。
第4密度の感覚が、世界を柔らかく照らしていた。
レイラが告げる。
「艦長(キャプテン)、出港準備完了です」
ヤマトは前方の光の海を見つめ、ゆっくりと命じた。
「……アステリア号、発進する」
船体が静かに浮上し、ルーメリアの光の都市が遠ざかっていく。
宇宙港上空から惑星ルーメリアの軌道上にジャンプ。
「さあ、次はどこに行きましょうか?艦長」
「ここから、近い文明世界は?」
「プレアデスです」
「では、そこへ行こう!」
「了解!」
こうして──ヤマトの本格的な銀河の旅が始まった。
つづく