SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第48話

未知の生物との接触

未知の惑星バーナード星の上空で、二隻の戦艦は緊張に包まれていた。

アグライア号が発進したと同時に、ハヤトはダイダロスゼノン号のシルビアに通信し、
爆音と地響きがあった地下都市の状況を分析させた。

その間、メフィストスは、いったん地上へとアグライア号を不時着させ、
少年を乗り込ませるとまた発進させた。

地下都市で発生した爆音と地響き。

それが、ただの崩落ではないことを、ハヤトは直感していた。

「ハヤト、やはり地下のサーチは出来ないわ。けど、センサに熱反応があったわ」

モニター越しの声は冷静だったが、その奥には明らかな緊張が滲んでいた。

「よくやった。シルビア」

「で、どうだ?」

「ええ、何か大きな塊が地下を動いているみたい。けど、ここからはこれ以上は無理ね」

「そちらから、何か分からないかしら?」

通信の向こうで、わずかな沈黙が流れた後――

メフィストス艦長からの低く重い声が割り込んだ。

「分かった。では、こちらからも分析をしてみよう」

「それから、いったんこちらに来てくれ。ハヤトとガイアをそちらに連れていく」

「了解」

ダイダロスゼノン号はバーナード星上空まで降りてくると、アグライア号と空中でドッキングし、
ハヤトとガイアを回収した。ハヤトはその際、少年も一緒に連れてきた。

ダイダロスゼノン号ブリッジ――

「ハヤト、その子は?」

シルビアが問いかける声に、ハヤトは少年の肩に手を置きながら答えた。

「ああ、この星の子だ」

「他にも、地下のあちこちに都市があるらしい」

「それで、さっきも熱反応があったのね」

「ここから、そう遠くない場所みたいよ」

その言葉に、少年の顔が一瞬で青ざめた。

「まさか……僕達の住んでいた場所じゃないよね」

「それは……ちょっと分からないわ。
私達は、この土地のどこに地下都市があるのかさえ分からないのよ」

少年は唇を噛みしめ、必死に記憶を辿るように顔を上げた。

「僕、分かるよ」

ハヤトは思わず身を乗り出した。

「ホントか?」

「うん、実は父さんに内緒で友達とあっちこっち探検したりしててさ。
他の都市の子とも時々遊んだりしてるからね」

「地下都市は都市ごとに巨大な扉があって、そこは大人の許可がないと通れないんだ。
そこは、たぶん他の都市へいける通路だと思うんだけど、
僕達子供しか通れない狭い穴もあるんだ」

「だから、頭の中に入ってるよ」

「地下都市は、そう多くないしね」

「じゃあ、いくつあるの?」

シルビアは少年に優しく尋ねた。

「うん、地下都市は全部で五つ」

「五つ?」

「他には?」

「ううん、ないよ」

「以前は、もう少しあったみたいだけど、あの化け物に襲われて……」

「だから、大人たちは他の星に助けを求めたんだ」

「けど、けど……誰も助けに来てくれないんだ。
だから僕達は、このままここで死ぬしかないんだ」

その言葉は、幼い声とは思えないほど重く、艦内の空気を凍りつかせた。

「そんな……酷い」

シルビアは、少年を不憫に思った。

「そしたら、僕達の星の近くに船が飛んでるのを見つけたって誰かが言って……
これで僕達助かると思ったのに……」

少年は堪えきれず、大粒の涙を流しながら肩を震わせた。

その小さな背中を見つめながら、誰もすぐには、言葉を発することができなかった。

その時、アグライア号のメフィストス艦長から緊急通信が入った。

『中級の熱源反応があった』

それは偶然ではない。

明確な“破壊”の兆候だった。

操縦席に座るハヤトは、低く呟くように言った。

「……と言うことは、どこかの都市が、何かに破壊されたと言うことか。
このままでは、地下の人々が危ない」

次の瞬間、ハヤトは居ても立っても居られず、動いていた。

操縦桿を強く握り込み、機体を地表すれすれまで急降下させる。

「ハヤト何を?」

シルビアの驚きの声が響いたと同時に、メフィストス艦長から鋭い叱責が飛んだ。

『ハヤト、何をしている』

「何をって? もちろん、地下にいるという化け物をおびき出すんですよ」

『それは危険だ。相手がとんなものかも分からないんだぞ』

ハヤトの目は、すでに地面を射抜くように見据えていた。

「だが、このままでは地下にいる人々も危険なんだ。
化け物が、こっちに気を向けてくれれば、人々が逃げる時間も稼げるはずだ」

その言葉に、ケンジの声が力強く重なった。

『先輩、俺も先輩の案にのります』

『こら、ケンジ、君まで何を言っているんだ』

「艦長、無茶かもしれないですが、このまま、この星の人たちを放おってはおけません。
 乗りかかった船だし、この星の人たちが救えなくて、
 これからやろうとしている事が、できるとは思えないんです」

「きっと、俺の兄も、黙って見過ごすことはできないと思います」

「お願いします。やらせて下さい」

しばしの沈黙――

やがて、メフィストス艦長の重い決断が下された。

「仕方がない。分かった。が、もしもの時には……分かっているな?」

「はい」

ケンジの返答には、迷いはなかった。

二隻の戦艦は高度を限界まで下げ、地表を舐めるように低速で飛行を続けた。

静寂――

ただ、風圧だけが機体を震わせる。

やがて――十数分後。

地中に異変が走った。

警戒センサーが一斉に反応を示す。

次の瞬間、地面が裂けた。

巨大な何かが、まるで槍のように突き上がり、アグライア号へと激突した。

「うわっ!」

衝撃で機体が大きく揺れ、内部に警報が鳴り響く。

「ケンジ、艦の損傷具合を確認してくれ」

「アグライア号、大丈夫か?」

ハヤトからの確認の通信がアグライア号に入った。

「ああ、とりあえずはな。しかし、敵を見ることが出来なかった」

「そちらで何か分かるか?」

メフィストス艦長は、冷静に答えた。同時に、冷静に状況を分析。

「はい、後方のカメラが、そちらの様子を捕らえていました」

ガイアがメフィストス艦長に分析結果を報告。

「モニターで出します」

映し出された映像。

地割れと同時に現れた“巨大生物”。

長大で、異様で、生命の常識から逸脱した存在。

「なんて大きいんだ。あんなのが地中にいたなんて……」

「あんなのやっつけられるの?」

少年の震える声に、ハヤトは静かに歩み寄った。

そして、少年の肩に手を置く。

「ああ、任せておけ」

「俺達が必ず、みんなを助ける」

その言葉には、確かな決意が宿っていた。

彼はゆっくりと前を向き、その巨大生物を見据える。

この星に確実に存在する脅威。

運命は、どこまで彼らを試すのか。

そして、この星に残された人々の運命はどうなるのか。

つづく

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