SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第46話

明日への出航

火星軌道上、銀河連邦軍基地――

戦いの余韻をまだ残すその施設に、再び人と運命が集まり始めていた。

スターフォースのハヤト、シルビア、そして再生されたガイア。

その傍らには、新たに加わった一人の少女――メアリー・グッドウィルの姿があった。

彼女は民間人でありながら、この先の戦いに身を投じる覚悟を決めていた。

司令室の扉が開く――

ハヤトが足を踏み入れた瞬間、ひときわ明るい声が響いた。

「ハヤト先輩、お久しぶりです!」

振り向いた先にいたのは、若きパイロット――ケンジ・ゴトー。

ハヤトのかつてのライバル、ダイスケの弟だった。

「お前、ケンジか……」

「はい。俺も兄と同じ道を選びました」

その言葉に、ハヤトの胸の奥がわずかに揺れる。

戦場で失った命。

生き残った自分。

そして、その“続き”を生きようとする者。

それが、目の前にいた。

室内には、すでに全員が揃っていた。

アンナ司令官。

メフィストス准将。

そして、もう一人――無機質な美しさを持つ女性型アンドロイド。

静寂を破るように、アンナが口を開く。

「これより、ペガサス銀河派遣作戦の説明に入るわ」

その声には、迷いはなかった。

前に進み出たのは、メフィストスだった。

「諸君。ペガサス銀河までの航路は未知に満ちている」

彼の声は冷静でありながら、どこか張り詰めていた。

「さらに、我々の母星アルマーズでは、内戦の拡大が予測されている」

室内の空気が、わずかに重くなる。

「故に、新たな戦力が必要と判断された」

彼は静かに告げた。

「新チーム、ペガサスフォースの編成だ」

視線がケンジへと向く。

「隊長、ケンジ・ゴトー」

ケンジは軽く敬礼し、ニヤリと笑った。

「よろしく、先輩」

「メンバー、メアリー・グッドウィル」

メアリーは小さく頷いた。

「そして、ウラヌス」

無機質な瞳を持つアンドロイドが、静かに応答する。

「システム、正常稼働中です」

アンナがハヤトを見据える。

「この任務は、あなたたちに託されているわ」

その言葉は重かった。

「この子たちは優秀。でも、実戦経験は浅い」

一瞬の間。

「だから、守ってあげて」

ハヤトは静かに頷いた。

「了解です」

だが、その空気を破ったのはケンジだった。

「ちょっと待ってくださいよ、アンナ司令官」

不満げに腕を組む。

「俺たち、保護者付きですか?」

「そうよ」

即答だった。

「あなたは問題児だから」

室内に笑いが広がる。

「実力はトップでも、規律は最低レベルよ」

「ひどいなぁ……」

ケンジが肩をすくめる。

その時、ハヤトが軽く笑った。

「まあ、“かわいい子には旅をさせよ”ってな」

「先輩~!」

緊張していた空気が、一気にほどけた。

そして、出航――

二つの艦が、火星基地を離脱する。

ダイダロスゼノン号。

そして、新鋭艦アグライア号。

アグライア号、ブリッジ。

「間もなく太陽系を離脱します」

ケンジの声が響く。

メフィストスは、ゆっくりと頷いた。

「では、新航法の実験を開始しよう」

それは、人類とハイデビロンが共同で生み出した新技術。

ジャンプ・ドライブ航法。

「ウラヌス、準備だ」

「了解。ニューロ・ネットワーク接続」

機械的な声が静かに応答する。

「タキオン粒子、散布開始」

空間がわずかに歪み始める。

「座標、へびつかい座、ラス・アルハゲα」

「固定完了」

メフィストスが振り返る。

「この航法中、我々の肉体は停止状態に入る」

その言葉に、メアリーが不安そうに目を伏せた。

「大丈夫だよ」

ケンジが優しく声をかける。

「ちゃんと戻ってくる」

メアリーは小さく頷いた。

「ジャンプ・ホールド、開始」

ウラヌスの声と同時に、

世界が途切れた。

光も、音も、時間さえも消える。

そして――

次の瞬間。

アグライア号は、全く異なる星域に出現していた。

わずか一瞬で、数万光年。

ジャンプは成功した。

だが――

「なんだ、あれは……?」

ケンジの声が凍りつく。

レーダーに映る、三つの影。

正体不明のサルベージ船。

通信なし。

警告なし。

ただ、接近してくる。

次の瞬間――

強制牽引フィールドが展開された。

「捕まった……!?」

アグライア号は、抵抗する間もなく拘束される。

未知の技術。

未知の存在。

彼らは、そのまま連行されていく。

行き先は――

バーナード星。

そこは、まだ誰も知らない世界。

ペガサス銀河へ向かうはずだった新たな旅は、

思いもよらぬ形で幕を開けた。

それは、未知との遭遇。

そして――

新たな銀河大戦の序章だった。

つづく

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