SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第45話

謎の美少女 後編

マンションの扉が開いた瞬間、
シルビアの目の前に現れたのは、柔らかな微笑みを浮かべた少女だった。

「シルビア様……こんにちは。お久しぶりです」

メアリー・グッドウィル。

金色の長い髪を揺らしながら、彼女は嬉しそうに頭を下げた。

シルビアも微笑んだ。

「メアリー、こんにちは。本当に久しぶりね」

メアリーは、ぱっと表情を明るくした。

「あっ、どうぞ。中へお入りください」

そう言って、扉を大きく開け、シルビアを室内へ案内した。

部屋の中は、メアリーらしい空間だった。

壁やカーテンは淡いパステルカラーで統一され、柔らかな雰囲気に包まれている。

窓際には大きな観葉植物が置かれ、キッチンのテーブルには白い花――

かすみ草が飾られていた。

戦争の爪痕が残る地球とは思えないほど、穏やかな空間だった。

その時だった。

「ワンワンワン!」

突然、小さな子犬が駆け寄り、シルビアに向かって吠え始めた。

メアリーが、慌てて声をかける。

「ルナ、だめよ。吠えちゃ」

子犬は一瞬きょとんとしたあと、しょんぼりと耳を下げた。

「クゥ~ン……」

そして、メアリーの足元へすり寄ってきた。

シルビアは思わず微笑んだ。

「元気な子犬ね」

メアリーは、優しくルナを撫でながら言った。

「ええ。でも、この子も戦いの犠牲者なんです」

シルビアは驚いた。

「犠牲者……?」

メアリーは、静かに語り始めた。

「地球が戦火に包まれた時……瓦礫の中で見つけたんです」

「全身傷だらけで、ほとんど息もしていなくて……」

「見つけた時には、もう瀕死でした」

シルビアは言葉を失った。

こんな小さな命まで――

戦争は容赦なく奪っていく。

その事実が、彼女の胸に重くのしかかった。

銀河のどこかでは、今も戦いが続いている。

シルビアは強く思った。

――早く終わらせなければ。

すべての戦いを。

これ以上、犠牲を増やさないために。

メアリーはキッチンへ向かい、コーヒーを用意した。

「シルビア様、どうぞ」

湯気の立つカップを差し出す。

二人はソファに座り、しばらく穏やかな時間を過ごした。

やがて、シルビアが尋ねた。

「メアリー、今は何をしているの?」

メアリーは、少し照れたように頬を赤らめた。

「夢をかなえるために……レッスンを受けているんです」

シルビアは微笑んだ。

「確か……アイドル歌手になることだったわね?」

メアリーは、嬉しそうにうなずいた。

「はい、そうです」

その笑顔は、とても純粋だった。

これから、戦場へ向かう人物とは思えないほどに。

シルビアは思った。

――本当にこの子を連れて行っていいの?

直接、聞こうとした、その時だった。

ピンポーン。

インターフォンが鳴った。

メアリーが立ち上がる。

「誰かしら?」

「すみません、ちょっと見てきます」

彼女は玄関へ向かった。

「はーい、どちらさまですか?」

外から男性の声が聞こえた。

「シルビアと一緒に来たハヤトといいます」

メアリーは、すぐにドアを開けた。

そこに立っていたのは――

シルビアと同じ軍服を着た青年だった。

整った顔立ち。

落ち着いた雰囲気。

メアリーは、思わず息を呑んだ。

――素敵な人……

まるで、映画の主人公のようだった。

思わず、見とれてしまう。

しばらく、その場で立ち尽くしていた。

ハヤトが、少し困った顔で声をかけた。

「あの……」

メアリーは、慌てて我に返った。

「あっ、すみません!」

「どうぞ、お入りください」

彼女は、ハヤトをリビングへ案内した。

そして、ハヤトにもコーヒーを出し、三人はソファに座った。

シルビアが、不思議そうに言う。

「ハヤト、どうしてここに?」

ハヤトは、少し照れたように頭をかいた。

「いや……ちょっと心配でさ」

「新しい仲間が、どんな子なのか見ておきたかったんだ」

そして、続けた。

「メフィストスが、これからの戦いにどうしても必要だって言うくらいだからな」

シルビアが慌てて言った。

「ハヤト!」

ハヤトはその瞬間、メアリーが目の前にいることを思い出した。

「あ……」

バツが悪そうに頭をかく。

メアリーは、少し微笑んだ。

「もしかして……」

「そのことを聞きに来たんですか?」

シルビアは静かにうなずいた。

「ええ、そうなの」

「あなたは、戦いを好まないはず」

「なのに、今回の作戦に参加するって、聞いたから……」

メアリーは少し黙った。

そして、静かに言った。

「私は……今でも戦いは怖いです」

俯いたまま続ける。

「でも……」

「私は、たくさんの戦場を見ました」

「たくさんの命が、消えていきました」

声が震えた。

「その中には……子供たちもいました」

「目の前で爆発に巻き込まれて……」

「私は怖かったんです」

「本当に怖くて……」

彼女は震える腕を、もう一方の手で強く握りしめた。

「でも……」

「もし、私の力で、少しでも悲劇を減らせるなら」

「怖くても、やらなければならないと思ったんです」

部屋は静まり返った。

ハヤトは言葉を失った。

――俺はこの子を甘く見ていた。

彼女は、ただの少女ではない。

真剣に悩み、考え、そして決断していた。

その覚悟に、ハヤトは胸を打たれた。

シルビアも、また同じ思いだった。

かつて、ハイデビロン帝国にいた頃、彼女を巻き込まなくてよかったと何度も思った。

だが今――

彼女を連れて行かなければならない。

その現実が、胸を締めつけた。

シルビアは静かに尋ねた。

「メアリー」

「それじゃあ……私たちと一緒に来てくれるの?」

メアリーは迷いなく答えた。

「はい」

「行きます」

そう言ったあと、彼女はふとハヤトを見た。

そして、少しだけ照れたように微笑んだ。

どうやら、彼女は――

ハヤトのことが気になるらしい。

もしかすると、一目惚れかもしれない。

これから始まる戦いの中で、この小さな恋はどんな未来を迎えるのだろうか。

そして、メアリーには、これから新たな仲間たちとの出会いが待っている。

その先に待つのは――

かつての銀河大戦をも超える、巨大な戦い。

彼女の前途多難な運命が、今まさに動き始めようとしていた。

つづく

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