SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第43話

故郷への募る思い

火星基地を出発してから数日。

新型宇宙戦艦ダイダロスゼノン号は、静かに宇宙を航行していた。

艦内は平穏だった。

しかし、その静けさの中で――

一人の少女の心は、決して穏やかではなかった。

シルビアは、自室の椅子に座りながら小さく溜息をついた。

窓の外には、無限に広がる宇宙。

星々が静かに瞬いている。

しかし、その美しい光景も、今の彼女の心にはほとんど映っていなかった。

彼女の思考は、遠い故郷へと向かっていた。

惑星アルマーズ。

それは、彼女が生まれ育った星であり――

そして、多くの悲しみを残した場所でもあった。

幼い頃の記憶が、静かに蘇る。

シルビアには、生まれながらにして特別な力があった。

異能の力。

それは、人の心に触れ、宇宙の波動を感じ取ることができる力だった。

だが、その力は祝福ではなかった。

帝王キング・バアルは、その力に目をつけたのだ。

ある日突然、彼女は両親のもとから引き離された。

まだ、幼い少女だった。

泣き叫びながら両親にすがった。

だが、兵士たちは容赦なく彼女を連れ去った。

その日から彼女は――

「歌うたいの巫女」として、帝王に仕える運命を背負うことになった。

彼女の両親は、それに強く抵抗した。

しかし、その結果、二人は帝国により幽閉されてしまった。

それ以来、シルビアは二度と両親に会うことを許されなかった。

孤独な日々。

歌うことで人々を癒しながらも、その胸の奥には、いつも深い悲しみがあった。

シルビアは静かに目を閉じた。

――お父様……お母様……

胸の奥で、小さく祈る。

二人は今、どこにいるのだろう。

まだ、生きているのだろうか。

もし、生きているなら――もう一度、会いたい。

その瞬間、彼女の頬を涙が伝った。

ぽたり、と膝の上に落ちる。

その時だった。

部屋のインターコムが鳴った。

シルビアは、慌てて涙をぬぐった。

「はい、どうぞ」

扉が静かに開く。

そこに立っていたのは、ガイアだった。

「ガイアです」

「どうかしましたか? 体調でも」

シルビアは少し微笑んだ。

「いいえ、大丈夫よ」

ガイアは少し首をかしげた。

「故郷のことで、何か心配事でも?」

シルビアは、窓の外を見つめたまま答えた。

「ええ……それもあるわ」

少し沈黙が続いた。

そして、彼女は静かに言った。

「実は……」

「アルマーズのどこかに、私の両親が捕らえられているはずなの」

ガイアの目がわずかに見開かれた。

「それは……本当ですか?」

「ええ」

シルビアは小さくうなずいた。

「まちがいないわ」

ガイアは少し考えた。

「では、何か探し出す手がかりはありますか?」

シルビアは、ゆっくりと微笑んだ。

だが、その笑顔は、どこか悲しかった。

「ええ……心当たりがないこともないわ」

その瞬間だった。

今まで必死に抑えてきた感情が、堰を切ったように溢れ出した。

涙が頬を伝い、次々とこぼれ落ちる。

その時、背後から声が聞こえた。

「シルビア」

振り向くと、そこにはハヤトが立っていた。

シルビアは驚いた。

「ハ、ハヤト!? いつからそこに?」

ハヤトは、少し困ったように笑った。

「最初から、ずっといたよ」

どうやら、ガイアと一緒に来ていたらしい。

シルビアは、少し恥ずかしそうに笑った。

「そうだったの……」

そして、小さく頭を下げた。

「二人とも……心配してくれてありがとう」

「でも、あなたたちのおかげで元気になったわ」

ガイアが優しく言った。

「アルマーズに着いたら、ご両親を探しましょう」

シルビアは涙をぬぐった。

「ありがとう……」

ハヤトも静かに言った。

「ああ」

「俺たちがついている」

シルビアは微笑んだ。

「ありがとう」

しかし、ハヤトは少し真剣な顔になった。

「シルビア」

「そんな大事なことを、ずっと黙っているつもりだったのか?」

シルビアは少し視線を落とした。

ハヤトは続ける。

「俺たちは、今まで一緒に戦ってきた」

「数えきれないほどの危機を乗り越えてきただろ?」

「だからこそ……」

「俺たちは仲間なんだ」

その言葉には力があった。

「一人で抱え込む必要なんてない」

「どんな問題でも、きっと何とかなる」

ハヤトは笑った。

「少なくとも俺は、そう信じている」

シルビアは静かにうなずいた。

「ええ……」

そして、少し迷った後、続けた。

「でもね」

「もう一つ、別の心配事があるの」

ハヤトは、すぐに察した。

「さっき、話していた少女のことか?」

シルビアはうなずいた。

「ええ」

「彼女は軍人じゃないわ」

「でも……普通の人とも違う」

ハヤトは首をかしげた。

「違う?」

シルビアは静かに言った。

「それは……」

「彼女に会えば分かるわ」

そう言って、彼女は再び宇宙を見つめた。

遥か彼方。

青い星――地球。

そこには、ある少女がいる。

彼女は軍人ではない。

だが、確かに特別な存在だった。

その少女が、これから始まる危険な戦いに加わるという。

彼女は、いったい何者なのか。

そして――

どんな運命を背負っているのか。

無数の星が瞬く宇宙を見つめながら、

シルビアは静かに、その少女のことを思い浮かべていた。

ダイダロスゼノン号は、地球へ向けて航行を続ける。

その先に待つ、新たな出会い。

そして、新たな運命。

宇宙の静寂の中で――物語は、ゆっくりと次の章へ進もうとしていた。

つづく

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