コスモクリスタルの謎
ハヤトたちは、小型艇シンザンでハイデビロン帝国宙域を離脱した。
帝王キング・バアルの大艦隊は、すでに地球へ向けて出撃している。
もし先に到達されれば――
地球はもちろん、銀河そのものが危機に陥る。ハヤトは、ダイダロス号の操縦席で歯を食いしばった。
「まずいことになった…」
「クロッペンシュタイン博士に報告して、応援を要請しないと大変な事になる」
ガイアが通信装置を操作する。
「キャプテン、クロッペンシュタイン博士につながりました」
通信スクリーンに、白髪の科学者の顔が映し出された。
「博士、帝王キング・バアルが復活しました。
地球が、いや、この銀河が、この悪魔に飲み込まれます」ハヤトは続けて報告する。
「それから、キング・バアルは、
地球にあるコスモクリスタルというものを探しています」博士は静かに目を閉じた。
「そうか。とうとう動き出したか…」
低くつぶやく。
そして、思いがけない言葉を口にした。
「ハヤトくん、コスモクリスタルは、私が既に地球で発見していて、
ガイアのコアに内蔵されているブラックボックスに格納されているんだよ」ハヤトは思わず声を上げた。
「え?どういうことですか?」
博士は、ゆっくりと語り始めた。
それは、人類史の裏に隠された、驚くべき真実だった。
「私は、地球の南極で発見された超古代都市の調査をしたことがある」
氷の下に埋もれていた巨大遺跡。
そこには、数万年前の文明の記録が残されていた。
「そこで、数万年前に異星人が侵略してきて、
人類を壊滅に及ぶ程の大戦争があったことが記されていた」長い戦争。
それは、地球文明を滅ぼしかねない規模だった。
「長年に及ぶ戦争は、お互いの消耗戦となり、最終的に超兵器により地球が半壊、
そして古代人類と異星人も全滅した。と記されていた」ハヤトは息を呑んだ。
「それと、どういう関係があるんですか?」
博士は、静かに答えた。
「その超兵器の動力源になっていたと思われるのが、そのコスモクリスタルだ」
コスモクリスタル。
それは、単なる鉱石ではない。
「現代の科学を遥かに越えているテクノロジーによって編み出されたものだ」
極微細の粒子構造。
宇宙エネルギーを無限に増幅する未知の装置。
もし、その技術が悪用されれば――
「この技術を悪用すると、地球が破壊される恐れがある」
博士は、静かに続けた。
「だから、私は、それをガイアのブラックボックスの中に隠したのだ」
ハヤトは、しばらく言葉を失った。
「博士…」
博士の声は重かった。
「ハヤトくん、コスモクリスタルを決して敵に渡してはいけない」
「解かっています」
ハヤトは、うなずく。
「シルビアの勾玉が奪われました。
それもコスモクリスタル同様の危険があります」博士の表情が曇る。
「超兵器だけは、決して使わせてはいけない」
短い沈黙。
そして、博士は苦渋の決断を告げた。
「勾玉の回収に失敗した場合は、ガイアを使って勾玉を爆破するしか方法がない」
ハヤトの顔が凍りつく。
「ガイアを…爆破させると…?」
「人類を守るには…やもうえん…」
通信越しの博士の声は震えていた。
シルビアが小さくつぶやく。
「そ、そんな…」
重い沈黙が、船内を包み込んだ。
しかし、次の瞬間、ハヤトは拳を握りしめて立ち上がった。
「キング・バアルをぶっ倒すしかないようだな!」
その声には、迷いがなかった。
――しばらくの沈黙。
突然、通信回線に警報音が鳴り響いた。
新たな映像が、スクリーンに映し出される。
銀河連邦軍司令部。
そこに、アンナ司令官の姿があった。
「博士、敵の大艦隊が、こちらに向かって来ています」
博士の顔が、一瞬で厳しくなる。
「アステロイドベルトを張るんだ」
銀河防衛網の展開命令だった。
「銀河連邦全軍を出動させよ!」
巨大な戦争が今、始まろうとしていた。
博士は、最後にハヤトを見つめる。
「ハヤトくん、急いでくれ!」
「わかりました。博士」
ハヤトは、操縦席に戻る。
「ガイア、シルビア、火星に全速力で向かうぞ!」
ダイダロス号のエンジンが唸りを上げた。
目的地は――火星。
そこには、コスモクリスタルの秘密を解く鍵が眠っている。
そして、その先には、帝王キング・バアルとの決戦が待っていた。
銀河の運命を賭けた戦いが、いよいよ幕を開けようとしていた。
つづく