SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第37話

帝王復活

ハイデビロン帝国の巨大神殿。

三種の神器の力によって、ついに封印が解かれた。

長き眠りの中にあった帝王キング・バアルの魂が、
暗黒のエネルギーとなって空間を満たしていく。

その邪悪な魂は――
宰相エラントラの身体へと流れ込んだ。

黒い闇が渦巻き、神殿の柱が震える。

そして次の瞬間、ゆっくりと顔を上げたエラントラの瞳には、
もはや以前の理知的な光は存在していなかった。

そこに宿っていたのは、宇宙を滅ぼすほどの暗黒の意思。

帝王キング・バアルだった。

帝王の魂は、エラントラの肉体を完全に支配したのだ。

帝王は玉座の間を見渡し、低く命じた。

「メフィストス、帝国全軍の艦隊を地球に向け出撃させよ」

「は、かしこまりました」

命令を受けたメフィストスは深く頭を下げた。

しかし、その背筋には冷たいものが走っていた。

目の前に立つ存在は、もはや以前のエラントラではない。

そこから放たれるのは、この銀河すべてを飲み込みかねないほどの
凶々しい暗黒の威圧感だった。

(この力は…危険すぎる…)

メフィストスは思わずそう感じていた。

地球どころか――
この銀河そのものが消滅しかねない。

そんな恐怖すら感じさせる暗黒のパワーだった。

さらに、帝王は別の命令を下した。

ラスプーシキン将軍を呼び寄せ、冷たい声で言い放つ。

地球生命の源と呼ばれるパワーストーン――
『コスモクリスタル』

それを探し出せという命令だった。

帝王の瞳が妖しく光る。

「地球のコスモクリスタルを得ることによって、
 パワーを増幅させて完全復活となるのだ」

ゆっくりと腕を広げる。

「これで全宇宙は…ふっはっはははは…」

不気味な笑い声が、神殿の奥まで響き渡った。

やがて帝王キング・バアルは、
メフィストス艦隊とゲオルギオス艦隊を率いて出撃する。

巨大艦隊は帝国コロニーを離脱し、地球へ向けてワープ航路に突入した。

宇宙を覆い尽くすほどの大艦隊。

それは、まさに破滅の軍勢だった。

その頃――
帝国要塞の牢獄。

気絶していたハヤトは、ゆっくりと意識を取り戻していた。

冷たい金属の床。

重力拘束フィールドに囲まれた牢。

「くそっ、ここから出られないのか…」

拳を握りしめる。

「なんとか、脱出しないと…地球が、いや、全宇宙が滅んでしまう…」

ハヤトは脱出の方法を探していた。

その時だった。

遠くから、かすかな歌声が聞こえてきた。

透き通るような、美しい旋律。

それはシルビアの歌だった。

シルビアは特殊な声帯を持っている。

その歌声には、人の精神を操る力があった。

牢を監視していた帝国兵たちが、次々と眠るように倒れていく。

やがて牢の扉が静かに開いた。

「ハヤト、助けにきたわ」

「シルビア、お前、無事だったのか?」

「ええ、私は無事よ」

ハヤトは、ほっと息をついた。

「助かったよ」

そして、すぐに真剣な顔になる。

「早く、あの帝王を止めないと大変なことになるぞ」

「ええ、わかってるわ」

「ガイアは?」

「心配ないわ。デスパンドラが捜し出して救出しているはずよ」

「そうか…」

ハヤトが牢を出た、その時だった。

通路の奥に並ぶ巨大カプセルが目に入った。

透明なカプセルの中には、無数の人体が保存されていた。

「ん…こ、これは…」

ハヤトは思わず立ち止まる。

多くの人間が、実験体として保管されているように見えた。

その時、背後から声が響いた。

「それは、人間ではない」

振り向くと、そこには救出されたディアマンテスが立っていた。

「我々の遺伝子を組み込んで人工的に創り出したクローンのようなものだ」

「なぜ、こんなものを…?」

ディアマンテスは静かに答えた。

「我々は、地球の環境に適応させることのできる分身というか、
 種族の子孫を残すために、
 自らを人類と同じような人体を獲得する研究をしていたのだ」

ハヤトは眉をひそめた。

「しかし、お前、あの帝王とやらはヤバイぞ」

「ああ、わかっている」

ディアマンテスの声は低かった。

「帝王を止めないと、我々も消滅してしまう」

その時――

通路の奥から駆け寄る足音が聞こえた。

「シルビア樣…」

デスパンドラだった。

その後ろには、ガイアの姿もある。

「キャプテン、私は無事です」

「よかった、ガイア」

デスパンドラは、ディアマンテスに向き直った。

「ディアマンテス樣…」

「デスパンドラか…?」

ディアマンテスは、すぐに状況を説明する。

「帝王は、地球の『コスモクリスタル』と呼ばれる
 パワーストーンを捜し出そうとするはず。
 それを我々が先に見つけ出さないといけない」

「それじゃあ、早く追いかけていかないとな」

「コスモクリスタルは、運命の勾玉と同じ性質のものだ」

ディアマンテスは、シルビアを見る。

「我々の惑星のコスモクリスタルなのだ」

「シルビアの歌声に反応するストーンを探せばよいだろう」

「わかった」

シルビアは微笑んだ。

「ありがとう。ディアマンテス」

「残った我々も、お前たちに力を貸そう」

その言葉を聞いたデスパンドラは、静かに頭を下げた。

「シルビア樣、私は、ここに残って体制を整えて、必ず助けに参ります」

「わかったわ」

ハヤトは拳を握る。

「よし、じゃあ、俺たちは、すぐ地球に出発だ」

こうして、ハヤトたちは脱出に成功した。

しかし――

その頃すでに。

帝王キング・バアルの大艦隊は、地球のすぐ目前に迫っていた。

宇宙空間には、無数の帝国戦艦が不気味に集結している。

その艦隊は、地球を征服するためのものではない。

破壊し、消滅させるための艦隊だった。

この地球だけではない。

銀河すべてを飲み込もうとする暗黒の帝王。

キング・バアル。

その最終計画が、いま動き始めていた。

つづく

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