捕縛
ダイダロス号は、静かな宇宙空間を進んでいた。
その航路の先には、ハイデビロン帝国の本拠地――
コロニーNo.11アクエリオンが存在している。巨大コロニーの重力圏は、すでに目前に迫っていた。
ブリッジでは、緊張した空気が漂っている。
「さて、もう帝国のコロニーは目と鼻の先だ。
ここからは小型艇シンザンで潜入する」その時だった。
「キャプテン、右舷前方より、多数の艦隊がこちらに向かって来ています」
警告の声と同時に、スクリーンに無数の光点が浮かび上がった。
それは、明らかに敵艦隊の反応だった。
「なんだと…? 奴っこさん、俺たちのこと、とっくに気付いてたんだな…」
「…あれは…メフィストス艦隊…」
その言葉に、ブリッジの空気が一瞬凍りつく。
「ハヤト、どうするの?」
わずかな沈黙の後、ハヤトは低く言い放った。
「やるしかないだろ…ガイア、いくぞ!」
次の瞬間、ハヤトの身体は光に包まれた。
装甲が展開し、宇宙戦闘形態――
ブレードナイトへと変化する。漆黒の宇宙を裂きながら、ブレードナイトは敵艦隊へ突入した。
高速機動で敵戦艦の砲撃をかわしながら、エクステンドランサーを振るう。
鋭い閃光が宇宙を切り裂き、敵戦艦が次々と爆発していった。
だが――
何かが違う。
ハヤトは、戦いながら違和感を覚えていた。
その時、前方の宇宙に一機の機体が現れた。
それは――
ブレードナイトと酷似した、黒い装甲のアステロイドバトラーだった。
「あれは…?」
「…あれは、盗まれたアステロイドバトラー・ヘリオスですね」
「そういうことか…」
黒いナイトがゆっくりと接近する。
宇宙の闇の中で、二つの騎士型機体が対峙した。
互いに剣を構え、静かに相手の隙を探る。
やがて、黒いナイトが口を開いた。
「私の名は、エラントラ。そして、この姿はダークナイト・メンデルだ。
私とお前、どちらが強いか、決着をつけようではないか…」「ああ、いいだろう。望むところだ」
「キャプテン、敵の挑発にのってはいけません」
「しかし、こいつを倒さないと…」
次の瞬間――
二つの機体が同時に動いた。
剣と剣がぶつかり合い、激しい火花が宇宙に散る。
超高速の斬撃が何度も交差し、凄まじい攻防が繰り広げられた。
しかし、その戦闘の裏で、別の事態が進行していた。
メフィストス艦隊が、ダイダロス号を完全に包囲していたのだ。
「しまった…これが狙いだったのか…」
ダークナイト・メンデルは、ゆっくりと腕を掲げた。
その手には、黄金に輝く剣が握られていた。
三種の神器――
『王者の宝剣』「これで、最後だ!」
「あれは…」
その一瞬の隙だった。
メンデルは一気に踏み込み、宝剣を振り抜いた。
宇宙を引き裂くような眩い閃光。
光の刃が一直線に走る。
衝撃と共に、ブレードナイトのエクステンドランサーが粉々に砕け散った。
さらに、強烈な衝撃波が機体を吹き飛ばす。
「ぐっ――!」
ハヤトの意識が暗転した。
動かなくなったブレードナイトに、帝国軍の回収部隊が群がる。
ゲオルギオス将軍のハンガーン機攻部隊だった。
「メフィストス、そちらは…?」
「閣下、こちらも作戦成功です」
「よし、では、帰還する」
「はい…」
こうして――
スターフォースは完全に捕らえられた。ハヤトは強制的に融合を解除され、帝国の牢獄へと投げ込まれた。
ガイアは、ラスプーシキン将軍の分析班へと引き渡される。
そして、同時に捕らえられたシルビアとデスパンドラは、
キング・バアルの神殿へと連れて行かれた。巨大な神殿の内部には、すでにディアマンテスが立っていた。
「来たか…」
その前に、エラントラがゆっくりと歩み出る。
「さあ、お前の『運命の勾玉』を渡せ!」
強引に奪い取られた勾玉が、エラントラの手の中で妖しく輝く。
続けて、冷たい声が響いた。
「お前の『智の大盾鏡』も渡せ!」
「なんだと…きさま…」
「これからは、私が王になる。やれ!」
その瞬間、ゲオルギオス将軍が剣を抜き、ディアマンテスの喉元へ突きつけた。
抵抗は許されない。
静寂の中で、エラントラは高らかに笑った。
「これで、私が、この銀河の王になる。はっははははは…!」
ハヤトたちは、ハイデビロン帝国軍に完全に捕らえられてしまった。
そして、シルビアの『運命の勾玉』までも奪われてしまう。
エラントラの狙いは、ただ一つ。
三種の神器を揃え、帝王キング・バアルを復活させること。
それは――
銀河そのものを滅ぼしかねない、最悪の力だった。気を失ったまま、牢に閉じ込められたハヤト。
銀河は今、消滅という最悪の未来へと進もうとしていた。
つづく