ハイデビロン星人の謎
スターフォースを率いるダイダロス号は、静かな宇宙を進んでいた。
その航路の先にあるのは、ハイデビロン帝国の拠点――
コロニーNo.11アクエリオン。漆黒の宇宙の中で、巨大戦艦ダイダロス号は重々しく進路を取っていた。
ブリッジでは、緊張した空気が漂っている。
やがて、艦長席に立つハヤトが静かに口を開いた。
「さて、もうじきにハイデビロン帝国のあるコロニーNo.11アクエリオンに到着する。
そこで、上陸作戦だが、俺一人で潜入する。そして、奴らの要塞を一気に叩き潰す」その言葉に、すぐさまシルビアが声を上げた。
「ハヤト、それは、危険すぎるわ」
ハヤトは苦笑するように肩をすくめる。
「ああ、だから、そんな危険なところに、お前たちを連れて行く訳にはいかない」
それを聞いて、デスパンドラが前に出た。
「しかし、ハヤト殿、帝国内部は、私たちの方が詳しい…」
シルビアも続ける。
「そうよ。だから、無理はしないで、ハヤト。
安全に潜入できる方法があるのよ。だから、私も付いていくわ」デスパンドラが静かに頷いた。
「私にも、良い考えがあります」
しばらく沈黙した後、ハヤトは小さく息を吐いた。
「わかった。二人とも、ありがとう」
シルビアは穏やかな笑みを浮かべる。
「ハヤト、今度は、私があなたを……」
その時だった。
シルビアの胸元に下げられていた勾玉が、淡い光を放ち始めた。
神秘的な輝きが、ブリッジの空気を一瞬静止させる。
それを見たガイアが、興味深そうに問いかけた。
「それは、いったいどういうものですか? ただのアクセサリーではないですね?」
ハヤトも思い出したように言う。
「前に、俺の命も、それが助けてくれたと言ってたな」
シルビアは勾玉に手を添え、静かに語り始めた。
「これは、帝国の秘宝で三種の神器と呼ばれているもの。私の持つ運命の勾玉の他に、
ディアマンテスの智の大盾鏡、エラントラの王者の宝剣があるわ。
そして、これらは、私たち選ばれた三人の神官のみが所有できる。
これらには、隠された力が宿っていて、私たちハイデビロン人を導くと言われている」ハヤトは腕を組みながら頷く。
「だから、前に、お前のそれが狙われた訳だ」
デスパンドラが続けた。
「エラントラ様が、三種の神器を揃えて、
帝王キング・バアルを復活させると言っていました」その言葉に、シルビアの表情が凍りついた。
「な、何ということを……帝王を復活させるというのは、この銀河が滅んでしまう。
帝王の力は暗黒の無に帰する強大な力、誰にも止めることはできないわ」ハヤトは拳を握り締めた。
「それじゃあ、それを奴らに絶対に渡せないな」
すると、ガイアが新たな疑問を口にした。
「しかし、あなた方、ハイデビロン星人とは、いったい何ですか?
私が博士から聞いていたのは、バイオヒューマノイドだということですが?」ハヤトも同じ疑問を抱いていた。
「俺も、何かが引っかかっているんだ。お前がアンドロイドとは思えない……」
シルビアは、少し遠い目をした。
そして、ゆっくりと語り始める。
「私たちハイデビロン星人とは、アメーバのような無固体の知的生命体で、
生物や物質に寄生して活動することができる。
私たちの多くは、人型のバイオヒューマノイドに主に寄生している。
寄生することで、劣悪な環境にも適応でき、延命している」ガイアが静かに頷いた。
「やはり、知的生命体でしたか…」
シルビアの視線は、遥かな宇宙の彼方を見つめていた。
「私たちは、元々地球から数十万光年はなれたアンドロメダ星雲
ペガサス銀河系第3惑星アルマーズのナチュラン星人よ。
アルマーズは非常に地球と似た惑星であり、水資源の豊富な平和なところだった。
すぐ近くに接する兄弟惑星シオンが、地殻変動の地震災害によって難民が増えて、
アルマーズに避難移住するようになり、多くの異民族が流入したために、
アルマーズの自然環境が破壊され悪化した。
ナチュラン星人には抗体が無く、
きれいな水と空気がなければ生きていけない種族なので、
ナチュラン星人は、新に移住できる惑星を求めて銀河を旅していた。
その旅の途中で、ブラックホールに吸い込まれて、
この地球のある銀河系へと飛ばされて来たの。
それから、地球を発見したナチュラン星人は、
地球には先住種族が多くいることや、
高度な文明を持って活動している人類を調査し、
自然環境も、かなり破壊されていることも確認していた。
そこで、ナチュラン星人は、人類抹殺計画を考えた。
人類を抹殺し、自然環境を回復し、自ら移住地としようと考えた」ハヤトは静かに呟いた。
「なるほど、そういうことだったのか…」
ガイアが分析するように続ける。
「で、その攻略前線基地として、コロニーNo.9アクエリオンが選ばれた。
アクエリオンは、比較的、新しいコロニーで、人類の保養目的のために、
最新の空気清浄システムや天候システムが完備されていて、
緑の森や湖が多く存在していたために、
ナチュラン星人に適する恰好の前線基地となったということですか……」ハヤトはシルビアを見つめた。
「つまり、シルビア自身も、本体は無固体ではあるが、
人類と同じ知的生命体ということか?」シルビアは小さく微笑んだ。
「私は最初、白鳥に寄生し、白鳥の遺伝子をコピーし、
そして、アクエリオンの人間に寄生した新人類ということになるわね」デスパンドラも静かに言った。
「私も、最終的にアクエリオンの人間に寄生しました」
その言葉の後、ブリッジには沈黙が落ちた。
ハヤトは何も言わなかった。
「……」
彼の心の中には、複雑な思いが渦巻いていた。
これまで戦ってきた敵は、単なる機械でも、悪魔でもなかった。
自分たちと同じように、生き延びるために宇宙を彷徨ってきた知的生命体だったのだ。
この先に待つ戦いは、単なる戦争ではない。
それは――
二つの種族の未来を賭けた戦いになるのかもしれなかった。ダイダロス号は、静かにアクエリオンへと近づいていく。
運命の戦いの舞台へと。
つづく