SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第34話

陰謀

ハイビロン帝国では、新たな作戦がすでに動き始めていた。

帝国宰相エラントラは、静かな声で命じた。

「ゲオルギオス、われわれに敵対する国家の1つに脅しをかけよ。
 そこに、スターフォースへ攻撃させるのだ。
 奴らも、まさか味方から攻撃されるとは思うまい」

その前に立つゲオルギオスは、ゆっくりと頭を下げた。

「それは、すばらしい作戦……すぐに作戦を開始いたします」

そう言うと、深く一礼してその場を下がった。

ゲオルギオスが目を付けたのは、政情が不安定で軍事力も弱い小国――
スコルピオン首長国だった。

スコルピオン首長国の首長、サトリ・アラムーンは、
突然届いたハイビロン帝国からの通信に驚愕していた。

通信は一方的なもので、こちらからの応答は一切受け付けない。

その内容は、あまりにも冷酷なものだった。

――我々に従い汲みせよ。
――そして、スターフォースを攻撃せよ。
――さもなくば、大艦隊をもって、お前達のコロニーを破壊する。

通信が途絶えたあと、執務室には重い沈黙が落ちた。

秘書官が、思わず声を上げた。

「首長、奴らの言いなりになるんですか? どうか、お考えを」

アラムーン首長は険しい顔で答えた。

「だが、奴らがこのまま黙っているはずがない。
 そうなれば、このコロニーなど……」

「ですが……」

「よく考えてみろ。お前も奴らの力は知っているではないか……」

秘書官は言葉に詰まった。

「そ、それは……そうですが……」

首長は深く息を吐いた。

「どうしようもないのだ。国民を守るのが私の仕事なのだ」

「首長……」

やがて、苦渋の決断を下すように言った。

「わが国の防衛軍にスターフォース攻撃命令を出すのだ」

秘書官はうつむいたまま答えた。

「はい、分かりました……」

悔しそうな表情を浮かべたまま、秘書官は首長室を出て行った。

執務室に残されたアラムーン首長は、力なく椅子に身を沈めた。

そして、誰にも聞こえない声で呟いた。

「悪者になるのは、私1人でいい……」

やがて、スコルピオン首長国から二隻の戦艦が発進した。

その艦隊は、近づいてくるスターフォースに向かい、突然攻撃を開始した。

ダイダロス号のブリッジが緊張に包まれる。

「な、なんだ? いきなり……俺達は味方だぞ!」

シルビアも驚いたように言った。

「どういうことかしら? まさか、もうすでにハイビロン帝国に……」

デスパンドラが静かに状況を見極めていた。

「調べた方が良さそうですね。
 私が直接、スコルピオンに潜入して真相を確認して来ます」

シルビアがすぐに制止する。

「デスパンドラ、それは、危険すぎるわ」

だが、デスパンドラは落ち着いて答えた。

「シルビア様、私は大丈夫です。そう簡単には、やられませんから」

ハヤトはうなずいた。

「悪い、頼むぜ」

「はい」

ハヤトが振り向く。

「ガイア、準備を」

「ラジャー!」

ガイアが小型偵察機コンゴウの発進準備を整えると、
デスパンドラは機体に乗り込み、そのままスコルピオンへと発進した。

その頃、スコルピオンでは大混乱が広がっていた。

自国の軍が、スターフォースに攻撃している――
その事実が瞬く間に国中へ広がったのである。

住民たちは狼狽した。

本来、自分たちを守ってくれるはずのスターフォースに、自国軍が攻撃しているのだ。

宇宙神秘教の信者でもある多くの住民たちは神殿へ集まり、神に祈りを捧げていた。

この意味のない戦いが、早く終わるようにと。

その光景は町の至る所で見られた。

だが、その一方で――

汚職政治家たちは愛国心を煽り、戦禍を拡大させようとしていた。

裏社会へ大量の武器が横流しされ、町は次第に暴徒で溢れていく。

財産を持って逃げようとする貴族に銃を向ける者。

金品を奪う者。

人々の叫び声と銃声が、街中に響き渡っていた。

まさに、町は戦場と化していた。

その惨状の中へ、デスパンドラの偵察機が降り立った。

彼女は町の光景を見て、思わず声を漏らした。

「これは、なんてこと!? 酷い……」

そのとき、目の前で悲劇が起きた。

小さな子供を連れて逃げていた母親が、流れ弾に倒れたのだ。

残された子供は、その場に倒れた母親にしがみつき、声を上げて泣いていた。

デスパンドラはすぐに駆け寄り、幼い子供を抱きかかえると、
その場を離れ安全な場所まで走った。

そこには女子供や老人たちが集まり、怯えて身を寄せ合っていた。

デスパンドラは町を見渡し、怒りを込めて言った。

「この国の首長は、いったい何をしているのだ?」

彼女は、そのまま首長府へ向かった。

建物に到着すると、迷うことなく首長の部屋へと入った。

そこには、椅子に座り込み、力なくうなだれているアラムーン首長の姿があった。

デスパンドラは鋭く問いただした。

「首長、なぜ我々スターフォースを攻撃するのですか? 
 それに、この町の有り様はどういうことですか?」

首長は驚いたように顔を上げた。

「それは……奴らに……それより、町が何だって?」

「知らないのですか? 町は、一部過激派の暴徒で、今戦場と化しています。
 なぜ、何もしないのですか?」

首長は愕然とした。

「町が、そんなことになっているとは……」

デスパンドラは続けた。

「何があったんですか? ハイデビロン帝国から何か脅されたんですね?」

首長は観念したように答えた。

「ああ、実は……奴らに脅されているのだ。スターフォースを攻撃しろと」

デスパンドラは静かにうなずいた。

「やはり、そうでしたか……では、まずは町の暴徒を大至急、静めて下さい」

デスパンドラは、ある策を講じた。

首長が国民を見捨ててコロニーから脱出するという偽情報を流したのである。

すると案の定、首長を狙う刺客たちが次々と現れた。

デスパンドラは彼らを包囲し、次々と拘束していった。

さらに、首長から国防軍一個師団を借り受け、暴動の鎮圧を開始した。

敵の侵略に便乗していたタカ派の汚職政治家や過激派グループは、
次々と拘束されていった。

やがて、町の広場に人々が集められた。

デスパンドラは群衆を前に立ち、声を張り上げた。

「我々はハイビロン帝国からの侵略によって、
 大切な人を亡くし、多くの悲しみ、苦しみを味わってきた。
 だが、これに屈すると言う事は、今までの戦いが無意味なものとなってしまう。
 亡くなった人が望んでいた事は何なのか? 
 皆が平和で幸せに暮らせる世界ではなかったのか? 
 首長も今回の事に大変心を痛めている。今一度、考えてみて欲しい」

その言葉は、人々の心へ静かに染み込んでいった。

武器を持っていた者たちは、次々と足元に武器を落としていく。

そして――

スターフォースを攻撃していた国防軍にも、攻撃中止命令が出された。

ダイダロス号のブリッジ。

ハヤトが小さく笑った。

「デスパンドラの奴……やってくれたな」

シルビアも安堵の表情を浮かべた。

「ええ、良かった……」

しばらくして、デスパンドラがダイダロス号へ帰還した。

「シルビア様、ハヤト殿、ご無事でしたか?」

ハヤトが笑って答える。

「ああ、デスパンドラ、お前のおかげで助かったぜ。
 あいつらを攻撃するわけにもいかなかったから、
 ずっと防御しっぱなしだったからな」

シルビアもうなずいた。

「デスパンドラ、本当に、あなたのおかげで助かったわ」

デスパンドラは静かに報告した。

「首長とも話がつきました。後は、彼がしっかりとやってくれると思います」

ハヤトは感心したように言った。

「そこまで……さすが、元敏腕将軍だな」

デスパンドラは少し照れたように答えた。

「いえ、あなた方のために、何か役に立ちたかったので……」

今回の戦いで、スターフォースのハヤト達は思っても見なかった戦いを余儀なくされた。

だが、デスパンドラの活躍によって、大きな人的被害を出すことなく事態は収束した。

彼らの戦いが終わる日は、果たして訪れるのだろうか……

つづく

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