SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第32話

追憶の彼方へ

漆黒の宇宙に、静寂を破る足音のような緊張が走った。

サジタリオン首長国の銀河連邦軍研究所。

そこに潜入したのは、ラスプーシキン将軍率いるハイデビロン帝国の特殊部隊だった。

研究所の防衛網を巧みに突破し、部隊は静かに目的を達成する。

開発途中のアンドロイド「ヘリオス」は強奪され、コンピュータには侵入痕が残され、
サイバーフュージョンセットアップシステムのデータがコピーされて持ち去られた。

警備兵も研究員も、倒れたまま。

室内には、死の静寂だけが残っていた。

クロッペンシュタイン博士は、壁に手をつき、天を仰ぐ。

「しまった……ヘリオスまで盗まれてしまったか……」

ウェンリー博士が肩をすくめる。

「しかし、開発途中の未完成だったのが、まだ幸いでした」

ジンダイジ博士も沈痛な面持ちでうなずく。

「サイバーフュージョンセットアップシステムのデータも、盗まれたようじゃ……」

クロッペンシュタイン博士は目を閉じ、深く息を吐いた。

「もう奪い返すのは難しい。ここは……スターフォースに頼るしかない」

その頃、ハイデビロン帝国内。

帝王キング・バアル神殿の暗闇の中で、神像の三つの目が妖しく青く光りだす。

突如、天を裂く稲妻が走り、神像を直撃した。

神像の周囲には暗雲が立ち込め、まるで悪魔の魂が宿ったかのような異様な気配が漂う。

一方、ダイダロス号は、ジェミニオンの銀河連邦軍基地でメンテナンスを終て、
再び宇宙へと出航しようとしていた。

「ガイア、ダイダロス号、発進!」

「了解、キャプテン」

ハヤトたちが、ジェミニオンの基地を出航して間もなく、
前方に多数のワープホールドの磁場がレーダーに反応した。

「キャプテン、前方にホールド磁場を確認。
 ギャラクシー級戦艦三隻と、プラネット級戦艦二十隻です」

ハヤトは苦笑した。

「早速、お出ましか……人気者は辛いな」

しかし、シルビアの声が鋭く響く。

「ハヤト、冗談言ってる場合じゃないわよ」

デスパンドラも顔を引き締める。

「あれは……ゲオルギオス将軍の艦隊……」

「それじゃ、帝国は本気で私たちを抹殺するつもりね」

シルビアも気を引き締める。

「あの艦隊の数は異常です」

デスパンドラさえも、こんな多数の艦隊を見たことはなかった。

「さあ、早速、撃ってきたわよ」

シルビアが、回避行動に出る。

ガイアが状況を報告する。

「キャプテン、敵のギャラクシー級戦艦から……未確認の機械獣?
 いえ、何か違う……騎兵隊のようなものが、こちらに向かって来ます」

ハヤトは眉をひそめた。

「シルビア、あれは何だ?」

「知らないわ。私も見たことがない」

デスパンドラが低くつぶやく。

「あれは……たしか、開発中の新型デストロイドじゃないかと……
 まさか、こんなに早く実践投入してくるとは」

ハヤトは決意を固める。

「よし、ガイア、行くぞ! シルビアは艦隊の迎撃を頼む」

「わかったわ。気を付けて、ハヤト」

「ああ……」

ハヤトはブレードナイトに装甲変化。

その身体は、光を弾き、力を溜めていく。

前方に展開したのは、新型デストロイド・ハンガーン機攻部隊である。

人型のデストロイドが、チョンマゴウという馬型の機械獣に乗って、
戦う騎兵隊のような機攻部隊である。

三対三の編隊で、ブレードナイトに連係攻撃を仕掛けてきた。

ブレードナイトは、鎖のような装置に捉えられ、身動きが封じられる。

更に、電撃を加えられて、長時間融合の後遺症のため、気を失ってしまった。

意識が朦朧とする中、ハヤトは記憶の彼方へ飛ぶ。

「ハヤト、お前は大きくなったら、何になりたい?」

父の声。

「俺は、父さんみたいなパイロットになるんだ」

「そうか……頑張れよ」

「父さん、父さん……どうして、どうして……死んだんだよ!
 伝説のパイロットじゃなかったのかよ!」

母の涙と、軍の上層部の説明が脳裏をよぎる。

「ハヤトくん、君の父上は、立派なパイロットだった。
 絶対に撃ち落とされない虹の荒鷲(レインボーイーグル)と呼ばれていたんだ」

「本当に伝説の英雄だったんだよ」

なぜ、英雄は死んだのか。

そして、士官学校入学の日を思い出す。

「俺は、父さんのようなパイロットを目指す。
 そして、父さんの伝説だった絶対に撃ち落とされない虹の荒鷲になってやる!」

そこで、ハヤトの意識が戻る。

ハヤトの目が鋭く光る。

「くそっ、負けられない、負けられないんだ! 俺の仲間は、もう誰にも殺させない!」

「トミー、ダイスケ、俺を守ってくれ! 俺は……」

ガイアの声が慌てる。

「キャプテン、まさか、ブラックボックス回路のリミッターを開放するんですか!?
 危険です、キャプテンの命が……」

「ガイア、心配するな。俺は、絶対に死なない!」

「そして、俺は、仲間を守る」

「ガイア、リミッターを外せ!」

ハヤトは、クロッペンシュタイン博士に禁止されていたリミッターを外した。

ブレードナイトの体内に、膨大なエネルギーが充満していった。

光が螺旋状に全身を走る。

「デストラクション・フラッシュ!!」

ハヤトは叫んだ。

その瞬間、ブレードナイトの全身から閃光が発せられて宇宙空間を照らし、
周囲の全ハンガーン機攻部隊を一瞬にして殲滅した。

この閃光に触れた全ての物質は、宇宙の塵となって無になるのである。

一方で、ダイダロス号が苦戦していた。

すぐに、ブレードナイトが駆けつけて、プラネット級戦艦を撃破していった。

「シルビア、敵、ギャラクシー級戦艦に照準を合わせ、メガ反重力粒子砲発射!」

「了解!」

メガ反重力粒子砲を発射し、ギャラクシー級戦艦二隻とプラネット級戦艦が全滅した。

ゲオルギオスのギャラクシー級戦艦のみが残り、ホールドして戦局を離脱していった。

ハヤトは、ダイダロス号の中に戻り、融合を解除した途端、倒れてしまった。

シルビアが駆け寄る。

「ハヤト、ハヤト、どうしたの?」

「デスパンドラ、早く、ハヤトを医務室へ」

ハヤトは、リミッターを外したことによって、
融合に大きな負担が体にかかったのであった。

ブレードナイトになることは、ハヤトの寿命を刻一刻と縮めているようなものであった。

サジタリオン首長国では、ヘリオスと融合の技術を盗まれ、
今までにないような激しい戦闘が、ハヤトの命を削るようにして襲いかかってきた。

ハヤトは、この運命を切り開き、銀河に再び平和を取り戻すことができるのだろうか……

つづく

-SF小説 銀河大戦