運命の歯車
ハイデビロン帝国・作戦司令室。
巨大な星図が静かに回転している。
元帥席に座る宰相エラントラは、その光を無表情に見つめていた。
向かいに立つのは、祭司長ディアマンテス。
「シルビアに続き、デスパンドラまでも離反」
低く重い声。
「運命の勾玉は、依然としてシルビアの手中か」
「そうだ」
エラントラは静かに立ち上がる。
「だが、歯車はまだ我らの支配下にある」
星図の一角が赤く点滅する。
「ゲオルギオス、ラスプーシキンを呼べ」
二人の将軍が跪く。
「ご命令を、エラントラ閣下」
「ラスプーシキン。特殊精鋭部隊を率い、サジタリオン首長国へ向かえ。
アステロイドバトラーを徹底調査せよ」「はっ、直ちに」
「ゲオルギオス。裏切者の討伐、そして、運命の勾玉の奪還だ」
「御意、我が部隊の準備が整い次第、出動します」
ディアマンテスが静かに言う。
「三種の神器は、すべて陛下の御物」
帝王キング・バアル陛下。
未だ顕現せぬ帝王の名が、空気を震わせる。
エラントラは告げる。
「コロニーNo.3のジェミニオンへ向かえ。銀河連邦軍の補給拠点でもある」
ディアマンテスの目が光る。
「同盟国を叩けば、連邦の兵站も揺らぐ」
「一石二鳥だ」
エラントラは静かに言い放った。
「歯車を回せ」
無数の戦艦が、宇宙へと発進した。
銀河連邦同盟コロニーNo.3、ジェミニオン。
巨大な円筒型コロニーの内部では、人工太陽が輝いている。
ここは、銀河連邦軍の正式な同盟衛星国家。
さらに――連邦軍の前線補給基地でもある。
ドックには補給艦、輸送艦、整備中の巡洋艦が並ぶ。
その一角へ、ダイダロス号が入港した。
「こちらダイダロス号。入港許可を願います」
ガイアの通信。
「識別コード確認。第3ドックへどうぞ」
整然とした軍港の空気。
補給クレーンが動き、燃料パイプが接続される。
ハヤトは周囲を見渡す。
「補給基地か……ここが落ちたら、連邦は痛いな」
デスパンドラが頷く。
「帝国が狙うなら、ここは最優先目標です」
補給基地内の休憩室。
窓の向こうでは、連邦軍艦艇が整備されている。
ヤマトが静かに言う。
「おそらく敵は、裏切者を抹殺するために、すぐに刺客を送り込んでくるだろう」
デスパンドラも心配しながら言う。
「はい、それから、シルビア様が持っている三種の神器のひとつ、
運命の勾玉の奪還にも来るはずです」ハヤトが振り向く。
「運命の勾玉? そんなに大事なものなのか?」
シルビアは胸元を押さえる。
「ええ、帝国の秘宝よ。私も詳しく知らないけど、
私を含めた三神官のみが所持できるもので、隠された秘密のパワーがあるわ」勾玉の淡い光が輝く。
「で、そのパワーとは?」
ハヤトは、興味深そうに尋ねる。
「三種の神器には、ディアマンテスが持つ智の大盾鏡、
アメノミカドが持つ王者の宝剣、そして、私の運命の勾玉があって、
私の持つ運命の勾玉のパワーによって、あなたの命を救ったわ。
それから、デスパンドラの命もね」「智の大盾鏡には、時間を操るパワーがあるわ。
で、王者の宝剣には、空間を切り裂くパワーがあると聞いてるわ」「これらの三種の神器は、元々帝王キング・バアルの所有物だったと聞くわ」
「キング・バアルは、私たちハイデビロン星人にとって、神のような存在で、
だれも、その姿を見た者はいないわ」ハヤトは、さらに疑問が湧く。
「なるほど。シルビアの願いを叶える運命のパワーか」
「で、やつらは、それを揃えてどうするんだ? 何かたくらんでいるのか?」
デスパンドラが息を呑む。
「それは、帝王キング・バアルを復活させるためではないかと……」
シルビアの声が震える。
「なんですって!? あのキング・バアルを! そんなことが……」
室内が凍る。
「どうした? シルビア、震えてるのか?」
巫女だった彼女の直感。
「あれは、決して触れてはいけないもの。この銀河が滅んでしまうわ」
「私は、巫女だったので、その強大な力と恐怖が解かるの」
「キング・バアルが復活すれば、私たちも滅んでしまうわ」
デスパンドラは険しい顔をしている。
ハヤトが立ち上がる。
「そうか。わかった。じゃあ、それを俺たちが死守しないとな」
その頃、ハイデビロン帝国のラスプーシキン将軍率いる特殊部隊は、
サジタリオン首長国に潜入し、研究所の研究員を殺し変装して潜り込み、
アステロイドバトラーについて調査を開始していた。ハイデビロン帝国では、ゲオルギオス将軍がハンガーン機攻部隊を三小隊編成し、
更に、ギャラクシー級戦艦3隻とプラネット級戦艦20隻を率いて、
裏切者の討伐に向かって発進した。つづく