裏切りの女将軍
ハヤト達、スターフォースは、ハイビロン帝国に向けて銀河を航行していた。
銀河は静かだった。
無数の星が瞬き、まるで戦いなど存在しないかのように輝いている。
ダイダロス号のブリッジで、ハヤトは腕を組んだ。
「静かだなぁ……」
窓の外を見つめる。
「こんなにきれいなのにさ。このどこかで戦争やってるなんて、信じられないよな」
「ハヤト、あなたがロマンチストだったなんて、知らなかったわ」
シルビアが、くすりと笑う。
「いや、別に、俺は……」
「顔が赤くなってますが、キャプテン」
ガイアまで真顔で追撃する。
「もういいって!」
三人の笑い声がブリッジに広がる。
その時だった。
警戒レーダーアラートが鋭く鳴る。
ガイアが状況を報告する。
「前方一時方向、多数の機影。急速接近中。識別――ドクト、トンヘ部隊」
ハヤトの顔から笑みが消える。
「敵だ!シルビア、ガイア、緊急警戒体勢!」
宇宙の闇を裂くように、無数の光が迫る。
その背後――彗星の尾を引く巨大な影。
デスパンドラ艦隊が出現。
帝国旗艦カール・ロビ・ヴァリンスキー号。
デスパンドラは前方スクリーンを見つめていた。
「……シルビア様は、あの船におられるのだろうか」
拳を握る。
「ドクト、トンヘ部隊、全機発進!」
無数の戦闘機が散開する。
罠は、すでに張られていた。
「敵が多すぎる!」
シルビアが叫ぶ。
「妨害電波確認。敵主力艦の位置、捕捉不能」
ガイアの声は冷静だが、緊張が滲む。
ハヤトは歯を食いしばる。
「くそ……誘い込まれたか」
次の瞬間。
闇を裂いて主砲が閃く。
ギャラクシー級旗艦とプラネット級戦艦が姿を現した。
「全艦、攻撃開始!」
デスパンドラの号令が宇宙を震わせる。
ダイダロス号に直撃弾。
船体が揺れる。
「もう迷ってる場合じゃない!」
ハヤトが叫ぶ。
「ガイア! サイバーフュージョン、セットアップだ!」
「了解!」
融合カプセルが閉じる。
光。
衝撃。
そして――ブレードナイト、出現。
蒼い装甲が宇宙に立つ。
「シルビア! 君は、このまま、ドクトとトンへ部隊を撃破してくれ!」
「了解!」
「俺は、敵の旗艦をたたく!」
ブレードナイトは、敵旗艦へ一直線に突っ込む。
だが、艦隊陣形は堅い。
艦隊の陣営を強固にして、連携攻撃を繰り出してくる。
集中砲火。
「くっ……なかなか近づけない」
瞬間、機体が揺らぐ。
「なら――これならどうだ!」
ミラージュステルス発動。
姿が消える。
次の瞬間、敵旗艦至近。
「ソードブレイカー!」
十発の短剣型誘導爆撃。
爆炎。
旗艦の主砲が吹き飛ぶ。
エンジン炎上。
航行不能。
「おのれ……ブレードナイトめ!」
デスパンドラの瞳が燃える。
「ならば――ダイダロス号を道連れに!」
旗艦が体当たりコースへ突入。
それを察知したのはシルビアだった。
「ハヤト!」
ブレードナイトが急反転。
だが――旗艦内部から別の機影が飛び出す。
赤黒い戦闘機体。
ネオサングーン。
「私はハイビロン帝国本軍の将軍、デスパンドラ!」
通信が開く。
「シルビア様……聞こえますか?」
シルビアの息が止まる。
「……デスパンドラ」
「……デスパンドラ」
「なぜ、帝国を裏切ったのですか!」
声が震える。
「私は命じられました。あなた様を抹殺せよと……!」
沈黙。
宇宙が静まり返る。
「ですが――」
デスパンドラの指が引き金から離れる。
「私には、あなたを撃てない!」
ハヤトが割って入る。
「シルビア、どうした?」
「待って、ハヤト!」
シルビアの声は必死だった。
「彼女は敵じゃない! 私の……たった一人の親友なの!」
デスパンドラの脳裏に蘇る幼き日々。
共に剣を振り、共に夢を語った日々。
「……シルビア様」
その瞬間。
ネオサングーンが急反転。
背後のギャラクシー級二番艦へ砲撃。
直撃。
爆発。
「デスパンドラ様!?」
帝国艦隊が動揺する。
次々と護衛艦を撃破。
戦場が混乱に包まれる。
やがて静寂。
デスパンドラの旗艦は沈み、彼女の帰る場所は消えた。
ネオサングーンがダイダロス号の前に止まる。
「……これで、私は帝国に戻れません」
一瞬の沈黙。
「シルビア様の船に、乗せていただけますか?」
ハヤトは黙って二人を見る。
裏切り者を受け入れるか。
それとも拒むか。
数秒。
だがその沈黙は重い。
「……分かった」
ハヤトが言う。
「シルビアが信じるなら、俺も信じる」
シルビアの目に涙が浮かぶ。
「ありがとう、ハヤト」
デスパンドラが深く頭を下げる。
「ハヤト殿、感謝する」
こうして――帝国の女将軍は裏切った。
だが、それは、友情を守るための決断だった。
新たな仲間を得たスターフォース。
しかし、この選択が、さらなる激動を呼ぶことを、まだ誰も知らない。
つづく