新たなる戦いの序曲
人工衛星都市国家コロニーNo.9、サジタリオン首長国。
蒼く輝く恒星を周回するそのコロニーは、戦火とは無縁の理想郷のように静謐だった。
バイオヒューマノイド技術と量子工学の最先端を誇る中立国家――
だが今、その地下深部では、銀河の未来を左右する計画が進行していた。ダイダロス号の艦橋から降り立ったハヤトを迎えたのは、見覚えのある二人の科学者だった。
「博士……」
「待っていたよ、ハヤトくん」
クロッペンシュタイン博士が、白衣の裾を揺らしながら微笑む。
「元気になったようだね」
ジンダイジ博士も穏やかに頷いた。
「それから、こちらはウェンリー博士だ」
無駄のない動きの女性科学者が軽く会釈する。
「よろしく。ガイアの設計主任よ」
ハヤトは隣に立つガイアを見た。
無機質な瞳の奥に、かすかな光が宿る。「アンナ司令官から聞いていると思うが」
クロッペンシュタイン博士の声が低くなる。
「アステロイドバトラー計画を、いよいよ実行段階に移す。
ダイダロス号とガイアを改造する。その間、君はシミュレーション訓練を受けてもらう」「了解しました」
ハヤトは迷いなく答えた。
守れなかった命。
背負った責任。彼の中で、それらは既に決意へと変わっていた。
一カ月後。
重力制御室の中央に、巨大な円筒装置が鎮座していた。
融合カプセルユニット――物質融合変換装置。「これが、アステロイドバトラーの中枢だ」
クロッペンシュタイン博士が説明する。
「内部で人間とロボットの融合を行い、サイバロイドへと装甲変化する。
これを“サイバーフュージョン・セットアップ”と呼ぶ」「君の心身をガイアと融合させ、強化新造人間として再構築するのだ」
ジンダイジ博士が続ける。
「ただし、負担は大きい。装甲時間は限られる」
ウェンリー博士が静かに言った。
「ガイアは、もともとハイデビロン帝国軍団に対抗するための秘密兵器。
その真の力を解放する時が来たの」クロッペンシュタイン博士は、ハヤトを真っ直ぐ見据えた。
「君は銀河騎士――ブレードナイトとして戦うのだ!」
ハヤトは頷いた。
「やります」
その時、警報が鳴り響く。
「アンナ司令官から入電です」
ガイアの声が響く。
『敵艦隊が火星に向かっているわ。ハヤトの準備は?』
「こちらから出撃させる。耐えてくれ」
『了解』
通信が切れる。
「博士、発進します!」
「ああ、頼んだよ!」
ダイダロス号は光速航行に入り、火星へ向かう。
「アンナ司令官、状況は?」
『新型機に苦戦しているわ。シルビアが以前搭乗していた機体と同型よ』
「それは“サングーン”と呼ばれるデストロイドです」
シルビアが補足する。
「シルビア、舵を頼む。ガイア、サイバーフュージョン・セットアップだ!」
「了解。キャプテン」
融合カプセルが閉じる。
光。
衝撃。
意識が拡張される。
ハヤトの肉体と精神が、ガイアの量子演算中枢と結合する。
骨格は強化装甲へ、神経は光学回路へと変換される。
銀色の装甲を纏った騎士が、ダイダロス号の船首に立つ。
銀河騎士ブレードナイト、誕生。
右手に召喚されたのは、光槍エクステンドランサー。
「行くぞ!」
ドクト級、トンへ級を斬り裂きながら突進する。
サングーンが、デストロイド形態へ変形。
「シルビア、バトロイドモードだ!」
ダイダロス号が、巨大ロボット形態へ変形する。
「ミラージュ・ステルス!」
ブレードナイトの姿が消える。
次の瞬間、死角からの突撃。
エクステンドランサーが、サングーンの胸部炉心を貫いた。
爆散。
「戦艦モードに戻せ! 艦隊を叩く!」
ダイダロス号が再変形し、敵艦隊へ肉薄。
「メガ反重力粒子砲、発射!」
白光が宇宙を裂く。
敵艦隊は一瞬で蒸発した。
『ハヤト、よくやったわ』
アンナ司令官の声が届く。
「ブレードナイトの力……すごい」
だが、ハヤトは知っている。
この力は、守るためにある。
ダイスケとトミーの無念を胸に。
銀河騎士ブレードナイト。
新たなる戦いの序曲が、いま鳴り響いた。
銀河大戦は、次の段階へと進む。
つづく