SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第26話

メギドの炎

――銀河大戦・地球最終防衛戦――

ハイデビロン帝国地球侵略要塞、司令室。

漆黒の宇宙を映す巨大な戦術スクリーンの前で、デスパンドラは静かに膝を折った。

「閣下、敵の戦艦が多数集結しています。
地球連合軍、さらに銀河連邦軍の増援も確認」

軍師席に座すエラントラの双眸が、妖しく輝く。

「……来たか。ならば、全軍、出動させよ」

その一言とともに、要塞の外殻が開き、多数の戦艦群が宇宙へと吐き出された。

ドクト級、トンへ級の戦闘部隊の大群。

多数の艦影が星々を覆い尽くす。

一方、地球連合軍の艦隊も、
量産型超重戦闘マシン〈ハヤブサ〉を多数展開し、迎撃体制に入っていた。

宇宙は瞬く間に、閃光と爆炎の海と化す。

レーザー光と粒子砲が交錯し、戦闘の断末魔が真空を震わせる。

破壊された戦艦の残骸が、流星のように散っていく。

さらに、帝国軍側は、サソリ型機械獣〈アバドン〉を大量投入。

赤く光る複眼と、毒針のような尾が、戦場を蹂躙する。

「スターフォース、出るぞ!」

ハヤトの声が、通信回線を震わせた。

フェニックス、ドラゴン、シャーク出動。

三機の超重戦闘マシンはデルタ陣形を取り、敵陣へ突入する。

その直後、宇宙の闇を裂いて現れたのは、巨大な竜の怪物型機械獣だった。

「なんて、質量だ……!」

ダイスケが呻く。

「超重合体だ、急げ!」

三機の超重戦闘マシンは光の奔流に包まれ、超重合体――ゴッドカイザー。

全高数十メートルの鋼鉄の巨神。

背部のエネルギー翼が蒼白く燃え上がる。

だが、敵は多い。

四方八方から迫るアバドン、さらに巨大機械獣の咆哮。

戦局は混沌を極めた。

その時――

「銀河連邦軍、増援部隊到着!」

通信士の叫びとともに、新たな艦隊がワープアウトした。

統制の取れた砲撃が、帝国軍の戦艦を次々と撃ち抜く。

ゴッドカイザーは、剣撃サンダークラッシュでアバドンを両断撃破。

巨大機械獣は、プリンシパリティ号のメガ反重力粒子砲によって貫かれ、光の塵と化した。

「ハヤト、要塞を攻撃するのよ!」

アンナ艦長の声が飛ぶ。

「了解!」

ゴッドカイザーは、侵略要塞へ向けて突進した。

その瞬間――要塞が震えた。

「要塞を起動せよ」

エラントラの冷酷な命令とともに、巨大構造体が変形を始める。

七つの首、十本の角を持つ、悪魔のような超巨大機械獣。

雷鳴のような轟音と共に、その全身が黒い稲妻を放つ。

放たれた一撃。

それは、光ではなかった。

存在そのものを焼き払う“メギドの炎”。

次の瞬間、地球連合軍と銀河連邦軍の艦隊が、幾つも消滅した。

爆発すら残さず、ただ無に帰す。

「……なんて、兵器だ……」

ブリッジが凍りつく。

シルビアが震える声で言った。

「艦長……あの要塞は鉄壁です。
 内部のコアを破壊しない限り、止められません」

アンナは一瞬、瞳を閉じた。

「ハヤト。内部に侵入して、コアを破壊するのよ」

「了解!」

「コアの位置は、私がナビゲートします」

シルビアの指示のもと、ゴッドカイザーは要塞内部へと突入した。

暗黒の回廊、うねる配線、脈動するエネルギー炉心。

激しい迎撃をかいくぐり、ついに中枢コアへ到達する。

「これで終わりだ!」

ゴッドカイザーの必殺砲撃ビッグバンキャノンが放たれた。

閃光。

そして、静寂。

要塞の攻撃が止まる。

だが、司令室では――

「これまでか」

エラントラは、薄く笑った。

「この要塞を自爆させる。デスパンドラ、脱出するぞ」

「ははっ!」

高速戦艦が要塞を離脱する。

その頃、内部では警報が鳴り響いていた。

「ハヤト、早く逃げて! 要塞が爆発するわ!」

シルビアは、首にかけた三種の神器の一つ――
“運命の勾玉”を握りしめた。

「お願い……生きて……!」

ゴッドカイザーは脱出を試みる。

しかし、白熱した爆炎が、全てを飲み込んだ。

衝撃波。
閃光。
轟音。

合体が強制解除される。

フェニックスは宇宙空間へ弾き飛ばされ、ドラゴンとシャークは炎に包まれた。

「ハヤト――!」

シルビアの叫びが、宇宙に吸い込まれる。

彼女の頬を、一粒の涙が伝った。

アンナ艦長も、リサも、三人の名を叫ぶ。

だが、応答はない。

やがて、巨大要塞は崩壊し、宇宙に巨大な火球を残して消滅した。

静寂。

地球は救われた。

しかし、その代償はあまりにも大きかった。

スターフォース三人の命と引き換えに、平和は取り戻されたのだ。

だが――
宇宙の彼方では、なおも異星人勢力の影が蠢いている。

銀河大戦は、終わっていない。

人類は、この脅威を退け続けることができるのか。

それとも再び、支配の闇に堕ちるのか。

メギドの炎は消えた。

だが、戦いの火種は、まだ宇宙に燻っている。

つづく

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