メギドの炎
――銀河大戦・地球最終防衛戦――
ハイデビロン帝国地球侵略要塞、司令室。
漆黒の宇宙を映す巨大な戦術スクリーンの前で、デスパンドラは静かに膝を折った。
「閣下、敵の戦艦が多数集結しています。
地球連合軍、さらに銀河連邦軍の増援も確認」軍師席に座すエラントラの双眸が、妖しく輝く。
「……来たか。ならば、全軍、出動させよ」
その一言とともに、要塞の外殻が開き、多数の戦艦群が宇宙へと吐き出された。
ドクト級、トンへ級の戦闘部隊の大群。
多数の艦影が星々を覆い尽くす。
一方、地球連合軍の艦隊も、
量産型超重戦闘マシン〈ハヤブサ〉を多数展開し、迎撃体制に入っていた。宇宙は瞬く間に、閃光と爆炎の海と化す。
レーザー光と粒子砲が交錯し、戦闘の断末魔が真空を震わせる。
破壊された戦艦の残骸が、流星のように散っていく。
さらに、帝国軍側は、サソリ型機械獣〈アバドン〉を大量投入。
赤く光る複眼と、毒針のような尾が、戦場を蹂躙する。
「スターフォース、出るぞ!」
ハヤトの声が、通信回線を震わせた。
フェニックス、ドラゴン、シャーク出動。
三機の超重戦闘マシンはデルタ陣形を取り、敵陣へ突入する。
その直後、宇宙の闇を裂いて現れたのは、巨大な竜の怪物型機械獣だった。
「なんて、質量だ……!」
ダイスケが呻く。
「超重合体だ、急げ!」
三機の超重戦闘マシンは光の奔流に包まれ、超重合体――ゴッドカイザー。
全高数十メートルの鋼鉄の巨神。
背部のエネルギー翼が蒼白く燃え上がる。
だが、敵は多い。
四方八方から迫るアバドン、さらに巨大機械獣の咆哮。
戦局は混沌を極めた。
その時――
「銀河連邦軍、増援部隊到着!」
通信士の叫びとともに、新たな艦隊がワープアウトした。
統制の取れた砲撃が、帝国軍の戦艦を次々と撃ち抜く。
ゴッドカイザーは、剣撃サンダークラッシュでアバドンを両断撃破。
巨大機械獣は、プリンシパリティ号のメガ反重力粒子砲によって貫かれ、光の塵と化した。
「ハヤト、要塞を攻撃するのよ!」
アンナ艦長の声が飛ぶ。
「了解!」
ゴッドカイザーは、侵略要塞へ向けて突進した。
その瞬間――要塞が震えた。
「要塞を起動せよ」
エラントラの冷酷な命令とともに、巨大構造体が変形を始める。
七つの首、十本の角を持つ、悪魔のような超巨大機械獣。
雷鳴のような轟音と共に、その全身が黒い稲妻を放つ。
放たれた一撃。
それは、光ではなかった。
存在そのものを焼き払う“メギドの炎”。
次の瞬間、地球連合軍と銀河連邦軍の艦隊が、幾つも消滅した。
爆発すら残さず、ただ無に帰す。
「……なんて、兵器だ……」
ブリッジが凍りつく。
シルビアが震える声で言った。
「艦長……あの要塞は鉄壁です。
内部のコアを破壊しない限り、止められません」アンナは一瞬、瞳を閉じた。
「ハヤト。内部に侵入して、コアを破壊するのよ」
「了解!」
「コアの位置は、私がナビゲートします」
シルビアの指示のもと、ゴッドカイザーは要塞内部へと突入した。
暗黒の回廊、うねる配線、脈動するエネルギー炉心。
激しい迎撃をかいくぐり、ついに中枢コアへ到達する。
「これで終わりだ!」
ゴッドカイザーの必殺砲撃ビッグバンキャノンが放たれた。
閃光。
そして、静寂。
要塞の攻撃が止まる。
だが、司令室では――
「これまでか」
エラントラは、薄く笑った。
「この要塞を自爆させる。デスパンドラ、脱出するぞ」
「ははっ!」
高速戦艦が要塞を離脱する。
その頃、内部では警報が鳴り響いていた。
「ハヤト、早く逃げて! 要塞が爆発するわ!」
シルビアは、首にかけた三種の神器の一つ――
“運命の勾玉”を握りしめた。「お願い……生きて……!」
ゴッドカイザーは脱出を試みる。
しかし、白熱した爆炎が、全てを飲み込んだ。
衝撃波。
閃光。
轟音。合体が強制解除される。
フェニックスは宇宙空間へ弾き飛ばされ、ドラゴンとシャークは炎に包まれた。
「ハヤト――!」
シルビアの叫びが、宇宙に吸い込まれる。
彼女の頬を、一粒の涙が伝った。
アンナ艦長も、リサも、三人の名を叫ぶ。
だが、応答はない。
やがて、巨大要塞は崩壊し、宇宙に巨大な火球を残して消滅した。
静寂。
地球は救われた。
しかし、その代償はあまりにも大きかった。
スターフォース三人の命と引き換えに、平和は取り戻されたのだ。
だが――
宇宙の彼方では、なおも異星人勢力の影が蠢いている。銀河大戦は、終わっていない。
人類は、この脅威を退け続けることができるのか。
それとも再び、支配の闇に堕ちるのか。
メギドの炎は消えた。
だが、戦いの火種は、まだ宇宙に燻っている。
つづく