SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第24話

解かれた封印

ハイデビロン帝国地球侵略要塞――司令中枢。

巨大な戦術ホログラムに映るのは、先の戦闘で損耗した艦隊の残骸データ。

赤い損害表示が静かに明滅していた。

「ヤツら、思ったより手強いな」

三神官エラントラの声は低く、冷たい。

「閣下、では《ハルマゲドン作戦》第二幕と参りましょうか?」

デスパンドラが妖しく微笑む。

その時、一歩前へ出たのはシルビアだった。

「……いえ。今度は、私自ら出ます」

銀の髪が揺れる。

「何か策があるのか?」

「ヤツらの秘密基地の位置を特定しました。海底に存在します。
 私の専用機《サングーン》で直接破壊します」

静まり返る司令室。

エラントラの口元が、わずかに歪む。

「なるほど……敵の根を断つか。
 よかろう。本軍より追加戦力を補充しておく」

「はっ」

シルビアは深く一礼した。

その瞳の奥に、一瞬だけ揺らぎが走ったことを、誰も気づかなかった。

銀河連邦科学技術研究所・海底基地。

損傷したドラゴンキャリアーが、整備ドックに固定され、
無数の修復アームが火花を散らしている。

「修理は、どれくらいかかりますか?」

ダイスケの問いに、ジンダイジ博士は唸った。

「少なくとも三日は必要じゃな。主翼フレームが深刻じゃ」

「無茶したからなぁ」

トミーが肩をすくめる。

アンナ艦長が報告を受ける。

「ガイアの解析で、敵本拠地の座標を特定しました。
 量産型ハヤブサ部隊も配備が進んでいます」

「ハヤブサは、フェニックスの量産型じゃ。
 出力は劣るが、人型兵士モードへ変形可能。ただし、合体機能はない」

ハヤトはうなずいた。

その時――

「艦長! 高速接近する戦艦一隻!」

「非常警戒態勢!」

海底を震わせる衝撃。

敵戦艦が魚雷を発射する。

「大丈夫じゃ。基地はイージスシールドで守られておる」

だが攻撃は続く。

「ハヤト、トミー、出動!」

「ラジャー!」

海面を突き破り、フェニックスファイターとシャークマリンが発進する。

敵戦艦は黒い装甲を輝かせ、海上に浮かんでいた。

「まずは主砲を潰す!」

ハヤトが急降下するその瞬間――
敵艦が変形を開始した。

装甲が分割し、内部機構が展開。

巨体が再構築され、ハイエンド機械獣へと姿を変える。

「なにっ!?」

その出力は、従来型の数倍。

二人はナイト形態、シャーク形態へと変形し応戦するが、
圧倒的なパワーに押される。

さらに、機械獣は変形した。

人型――デストロイド。

俊敏な機動、戦艦級火力、格闘性能を併せ持つ、ジェノサイドマシン。

「速すぎる!」
「攻撃が当たらない!」

挟撃を試みるが、すべて読まれる。

次の瞬間、シャークのウィングが閃光とともに切断された。

「やべ、しまったぁ!」

トミーの機体が蹴り飛ばされ、海面へ叩きつけられる。

「トミー!」

「俺は無事だが……マシンは戦闘不能だ」

ハヤトは、単独でデストロイドと剣を交える。

鋼と鋼が激突し、火花が散る。

「いいかげんに、くたばれ!」

その声。

「……シルビア?」

「そうだ。お前を倒しに来た」

冷酷な宣告。

「やめろ。俺はお前と戦いたくない!」

「なぜだ?」

刃が交錯する。

「思い出せ! 心の声を聞け! お前が好きだった歌を!」

ハヤトは戦闘通信回線に、特定周波数を乗せる。

かつて、二人で聴いたアイドル歌手の歌。

何気ない日常の象徴。

電子戦ノイズを突き抜け、旋律が流れる。

「何を……」

デストロイドが、わずかに動きを止める。

「こ、これは……」

シルビアの身体に微細な電流が走る。

封印された記憶領域に、アクセスエラーが発生する。

「ハヤト……?」

「思い出したか!」

次の瞬間、プリンシパリティ号の主砲が閃いた。

デストロイドの胸部装甲が吹き飛ぶ。

機体は半壊し、制御不能に陥る。

「シルビア!」

ハヤトはフェニックスを急接近させ、機体を降りる。

煙を上げるコックピットをこじ開け、内部から彼女を抱き上げた。

意識はない。だが、その表情は戦闘時の冷酷さを失っている。

「シルビア……」

名を呼び続ける。

遠く、撤退信号が響く。

封印は解かれたのか。

それとも、これはさらなる試練の始まりか。

戦いは、新たな局面へと突入する。

つづく

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