危機一髪!
宇宙は、閃光の嵐と化していた。
十数隻の戦艦や駆逐艦が、包囲陣を完成させ、
ドラゴンキャリアーを中心に、同心円状の砲撃網を展開する。逃げ場はない。
あらゆる方向から、高エネルギー砲と誘導弾が殺到する。
「くそっ、なんて数だ……!」
ダイスケは操縦桿を引き、機体をスピン回避させる。
重力制御翼が唸りを上げ、弾幕の隙間を縫う。
しかし、一条の光束が機体左舷をかすめ、衝撃がコックピットを揺らした。
「うわっ!」
警告灯が赤く点滅する。
姿勢制御が一瞬乱れたが、即座にサブスラスターを噴射し立て直す。
「敵は……一機ずつ確実に潰す気か」
包囲は縮小している。
通信は妨害され、味方の声は届かない。
「だがな……俺は、簡単にはやられん」
ダイスケは、深く息を吸い込む。
戦況ディスプレイに、全周敵影を表示。
戦術システムが一瞬で、弾道予測を組み上げる。
「このままじゃ削り切られる……ならば――」
両腕部装甲が展開し、巨大な砲身が姿を現す。
「オールレンジ・ハイパーバズーカ、発射!」
機体中心核から供給された膨大なエネルギーが、一点に収束し、
三百六十度全周へ拡散する光の奔流となって解き放たれた。閃光。
衝撃波。
複数の敵艦が同時に貫かれ、装甲を溶断され、次々と爆散する。
包囲陣に穴が穿たれた。
だが、なお残る艦隊が再び砲門を向ける。
その瞬間、戦域外縁から蒼白の閃光が走った。
「ガイア、ダイスケを援護! ハイパートリノキャノンを撃て!」
アンナ艦長の号令とともに、プリンシパリティ号の主砲が咆哮する。
超高密度トリノ粒子流が敵戦列を貫き、艦体を内側から崩壊させた。
連鎖爆発が広がり、敵陣形は大きく乱れる。
「ダイスケ、無事か!」
ハヤトの声が通信に戻る。
「おーい、生きてるかー!」
トミーの軽口も混じる。
「ふぅ……遅いぞ、お前たち」
ダイスケは苦笑した。
「これでも急いだんだぜ」
フェニックスファイターとシャークマリンが、
左右から突入し、残存艦を次々と撃破する。三機のフォーメーションが再び完成した。
戦況は、逆転した。
ハイデビロン帝国旗艦。
エラントラの拳が肘掛けを叩く。
「おのれ……あと一歩で仕留められたものを」
戦術星図モニタには、損耗率の上昇が表示されている。
「全軍、後退。体制を立て直す」
冷酷な判断。
デスパンドラは一礼し、残存艦隊へ撤退信号を送った。
赤い光点が、次々と後退軌道へ移る。
宇宙に静寂が戻り始める。
戦場に漂うのは、無数の残骸と冷えゆく爆炎。
ドラゴンキャリアーは大破こそ免れたが、
左舷装甲は溶断され、推進系の一部が停止していた。「損傷率三七パーセント。戦闘継続不可」
ガイアの診断が告げられる。
「ちっ……しばらく入院だな」
ダイスケは悔しげに呟く。
プリンシパリティ号へ帰投する三機。
ブリッジでは、安堵の空気が広がっていた。
「よくやったわ、みんな」
アンナ艦長の声は穏やかだが、その奥には新たな不安が潜む。
ドラゴンキャリアーは戦闘不能。
残るはフェニックスファイターとシャークマリンの二機のみ。
敵は、次こそ総力で来るだろう。
それでも――
ハヤトは遠くの虚空を見つめる。
その先に、まだ終わらぬ戦いを感じながら。
戦いは続く。
希望は、傷ついてもなお、消えてはいなかった。
つづく