戦いの中で
地球圏軌道上。
漆黒の宇宙を埋め尽くすように、数百隻規模のハイデビロン帝国艦隊が展開していた。
戦列は幾何学的に整い、旗艦を中心とする同心円陣形。
その外周には、無数の戦艦、駆逐艦、重爆撃艦が配置され、
さらに、その前衛に機械獣運用母艦が並ぶ。まるで一つの巨大な生物が、ゆっくりと地球へ覆い被さろうとしているかのようだった。
「艦長……」
ブリッジでリサが言葉を失う。
「分かっているわ。全員、直ちに戦闘体制」
「ラジャー!」
銀河連邦軍最新鋭戦艦《プリンシパリティ号》の内部が一斉に起動音を響かせる。
重力制御炉が出力を上げ、主砲エネルギーラインが赤く点灯した。
ジンダイジ博士が額の汗を拭う。
「あれだけの艦隊を、われわれだけで……? 増援はまだか」
「増援といっても、同規模の艦隊が来る保証はないわ」
アンナ艦長は、冷静に答えた。
「来るまでに、可能な限り敵戦力を削る。それが私たちの役目よ」
発進デッキ。
ハヤト、トミー、ダイスケはバトルスーツを装着し、
超重戦闘マシンへの発進準備を整えていた。装甲表面に粒子回路が走り、ニューラルリンクと同期する。
「艦長、発進準備OKです」
『ハヤト、トミー、ダイスケ。私たちが負けるということは、
地球が滅亡するということよ。必ず勝って帰ってきなさい』「大丈夫ですよ。チャチャーっと終わらせて、帰りますって」
トミーが軽口を叩く。
「敵は本気だ。油断するな」
ダイスケの声は低い。
「俺たちは、絶対に負けない」
ハヤトの言葉は短いが、揺るがなかった。
だが、アンナ艦長は、その瞳を見抜く。
『ハヤト。今は戦いに集中しなさい。
迷いがあるなら、発進は許可できない』「……大丈夫です」
ほんの一瞬、シルビアの面影が脳裏をかすめる。
だが、彼は拳を握りしめた。
『本当ね?』
「はい」
静かな沈黙ののち――
『発進を許可します』
「敵戦艦より多数のミサイル発射!」
ガイアの報告と同時に、宇宙が閃光で満ちた。
「迎撃開始!」
プリンシパリティ号の対空レーザー網が展開し、光の壁を形成する。
爆炎が次々と弾け、衝撃波が艦体を震わせた。
「新たに機械獣を確認!」
敵の母艦から放出された巨影が、獰猛な獣のように宇宙を駆ける。
重装甲、荷電粒子砲、自己修復機構――対艦戦用の怪物兵器。
『ハヤト、トミー、ダイスケ。超重戦闘マシンで機械獣を排除して』
「ラジャー!」
三機が射出される。
超重戦闘マシンは推進粒子を噴射し、瞬時に戦域へ突入した。
最初の機械獣が、咆哮のような重力波を放つ。
「くっ……重力歪曲フィールドか!」
ダイスケが回避機動を取る。
ハヤトは加速し、敵の死角へ滑り込んだ。
「トミー、右側面を!」
「了解!」
二機の連携射撃が、機械獣の関節部を撃ち抜く。
装甲が裂け、内部のエネルギー核が露出した。
「今だ!」
ハヤトの必殺砲が直撃し、機械獣は閃光とともに爆散する。
だが、次の瞬間、艦隊からの集中砲火が、プリンシパリティ号を襲った。
「キャー!!」
ブリッジが揺れ、火花が散る。
「被弾確認。しかし、戦闘継続は可能です」
ガイアの冷静な声。
ハヤトは振り向いた。
「プリンシパリティ号が……!」
「敵の数が多すぎる!」トミーが叫ぶ。
ダイスケが即座に判断する。
「ここは二人に任せる。俺が戻って、艦を援護する」
「一人でか?」
「ドラゴンキャリアーを甘く見るな」
彼の機体は可変型重戦闘支援機。高出力主砲と艦隊防衛システムを備える。
「無理するなよ」
ハヤトの声に、ダイスケは笑った。
「心配するな。あの艦を落とさせはしない」
ドラゴンキャリアーが反転し、加速。
敵艦隊の砲火をかいくぐりながら、プリンシパリティ号前面へ割り込む。
「主砲、最大出力――発射!」
青白いエネルギー奔流が、敵の駆逐艦を貫いた。
爆発が連鎖し、敵陣形に穴が空く。
その間にも、ハヤトとトミーは、次々と機械獣を撃破していく。
だが、敵の艦隊は、少ししか減らない。
むしろ、包囲は狭まりつつあった。
宇宙は、光と爆炎と金属の破片で満ちている。
戦いは、もはや局地戦ではない。お互いの総力戦だった。
ハヤトは、歯を食いしばる。
(シルビア……お前は、この戦場のどこかにいるのか)
その問いに答えるかのように、敵旗艦から新たなエネルギー反応が立ち上る。
宇宙での決戦は、まだ始まったばかりだった。
つづく