非情な戦い
荒れ果てた市街地。
戦闘ドローンの残骸が散らばる中、シルビアは静かに立っていた。
長い髪が風に揺れる。
ハヤトは迷いなく駆け寄る。
「シルビア! 俺だ! ハヤトだ! わかるか?」
その声には希望が混じっていた。
だが、彼女の瞳は、氷のように冷たい。
「誰だ? 知らんな」
胸が凍る。
「シルビア……忘れたのか?」
彼女はゆっくりと口元を歪める。
「人間は、欲に支配された矮小な存在。取るに足らぬ」
その言葉は刃だった。
ハヤトは衝撃波で吹き飛ばされる。
「ハヤト!」
リサの叫び。
シルビアは振り向きもせず命じる。
「三大将校。始末しろ」
闇が裂ける。
バラキーム。
パクキャンサー。
チェムラヒム。三人の異形将校が出現する。
「ははっ、畏まりました」
さらに上空に空間転移の閃光。
三体の機械獣が降下する。
ダイスケが低く呟く。
「交渉決裂だな」
トミーがハヤトを引き起こす。
「立てるか?」
「ああ……」
だが、声に力がない。
ダイスケが睨む。
「その状態で戦えるのか?」
リサの瞳に不安がよぎる。
次の瞬間、三大将校の一斉攻撃。
爆炎。
衝撃。
ハヤトは歯を食いしばる。
「……超重戦闘マシン、発進!」
数分後。
三機の超重戦闘マシンが上空から急降下。
市街地上空で、変形・装着。
ダイスケとトミーは、バトルスーツで将校と激突。
ハヤトも合流する。
その動きは荒々しい。
怒りが制御を曇らせる。
だが、戦闘経験は裏切らない。
三大将校は後退し、機械獣へ搭乗。
しかし、今回の機械獣は異質だった。
有機質な装甲。
黒いエネルギー脈動。
「エネルギー反応が通常の三倍!」
ガイアの警告。
三体が合体。
巨大な三頭獣へと変貌する。
重力場が歪む。
空が震える。
ハヤトたちも、即座に超重合体。
「ゴッドカイザー!」
鋼鉄の巨神が出現。
だが、合体獣のパワーは異常だった。
一撃で、ゴッドカイザーが後退する。
さらに――
空中に浮かぶシルビア。
再び歌い出す。
それは、精神干渉ではない。
純粋な増幅波。
合体獣の出力が急上昇する。
「くそっ……!」
ゴッドカイザーが膝をつく。
コクピット内、警報が鳴り響く。
ハヤトの脳裏に、観覧車の記憶がよぎる。
“人間には心がある”
“あなたも……”
だが今、彼女は敵として立っている。
迷いが、命取りになる。
その時。
上空に巨大な影。
スターフォース旗艦《プリンシパリティ号》が急行する。
アンナ艦長の声が通信に響く。
「ハヤト、だらしないわね!」
「艦長……!」
「ガイア、歌声の波形を解析。逆位相ジャミングを」
「了解。解析完了。ジャミング開始」
空間が震える。
シルビアの歌にノイズが走る。
増幅波が乱れる。
アンナが続ける。
「ハヤト、今よ!」
ハヤトは深く息を吸う。
迷いを切り捨てる。
「ラジャー!」
ゴッドカイザーが立ち上がる。
雷をまとい、拳を構える。
「サンダークラッシュ!」
雷撃が三頭獣を貫く。
さらに――
「ビッグバンキャノン、発射!」
収束したエネルギー砲が直撃。
三大将校の悲鳴。
「な、なんだこの出力は――」
閃光。
大爆発。
三頭合体獣は木端微塵となった。
静寂。
煙の向こうに、シルビアの姿はない。
すでに転送済み。
ゴッドカイザーは、合体解除。
ハヤトは、地上に降り立つ。
空を見上げる。
彼女の瞳には、何もなかった。
少なくとも――
あの時の記憶は感じられなかった。
リサが、そっと言う。
「……彼女は敵よ」
ハヤトは答えない。
異星人は、人間と同じ姿をしている。
だが、心はあるのか。
それとも、すべて演算された仮想感情なのか。
今回の戦いは勝利だった。
だが、ハヤトの中では、何かが決定的に壊れた。
非情でなければ、戦えない。
だが、非情になれば、何かを失う。
銀河大戦は続く。
そして、彼と彼女の戦いも――
まだ、終わらない。
つづく