SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第15話

禁断の楽園

ハイデビロン帝国 地球侵略要塞・司令室。

巨大なホログラムに、地球各地の光点が浮かび上がっていた。

「楽園(パラダイス)作戦の進行状況はどうだ?」

神官シルビアの声は静かだったが、そこには絶対的な支配の響きがあった。

「順調でございます」

アルトゥール将軍が一礼する。

「人間の“欲求”に直接作用する心理干渉プログラムは、
 予想以上の成果を上げております」

バラキーム大佐が不気味に微笑む。

「地上各地に設置したパラダイス。
 そこに足を踏み入れた者は、
 快楽物質と幻覚波動により精神が緩み、やがて依存状態へ。
 負の思念は増幅され、抵抗意志は消失します」

シルビアは頷いた。

「人間は、欲によって支配される。
 それが最も効率的な侵略だ」

ホログラムの光点は、じわじわと広がっていく。

数日後。

都市の中心部。

高層ビル群の中に、突如として現れた広大な森林地帯。

そこが“パラダイス”だった。

スターフォースは、その異常地帯へ潜入していた。

「都会の真ん中に森……ね」

トミーが空を見上げる。
鳥の声、柔らかな風、甘い花の香り。

あまりにも“理想的”だった。

「ガイア、スキャン結果は?」

『地下数キロにわたり、規則的な振動を確認。
 自然現象ではありません。巨大構造体が存在します』

「地下に何かいるってことか」

ハヤトは森の奥へと進む。

やがて中央広場へ出た。

そこは楽園だった。

白いテーブル、豪華な料理、音楽、笑い声。

人々は幸福そうに微笑み、酒を酌み交わし、踊っている。

あまりにも自然すぎる光景。

「……おかしい」

トミーは逆に落ち着かなくなる。

その時。

若く美しい女性が近づき、花輪を首にかけた。

「ようこそ、パラダイスへ」

その声は柔らかく、甘い。

「どうぞ、こちらへ」

トミーは完全に舞い上がる。

「至れり尽くせりだね!」

だがハヤトは飲み物を拒否した。

隣の女性に問いかける。

「ここは、いつできた?」

「最近ですよ。
 でも、ここでは“欲しいものはすべて手に入ります”」

女性の唇が歪む。

次の瞬間。

周囲の人間たちの皮膚が裂けた。

内部から金属骨格が露出し、眼が赤く発光する。

兵士ゴリアテ。

そして目の前の女性は姿を変えた。

軍装に包まれたバラキーム大佐。

「引っかかったわね」

森が歪む。

空が揺らぐ。

地面が蠢く。

『キャプテン!』

ガイアの緊急通信。

『このパラダイスは巨大機械獣です。
 我々は内部消化区画に取り込まれています』

森も、空も、料理も――

すべてが幻想投影。

精神干渉フィールドによる仮想空間。

実体は、都市一角を丸ごと飲み込む巨大機械生命体。

「なるほど……」

ハヤトはリスト通信機を起動。

「リサ、バトルスーツ転送。フェニックスファイターも」

光が降り注ぎ、戦闘装備が転送される。

トミーも戦闘態勢へ。

バラキームが剣を抜いた。

「欲に溺れぬ人間など存在しない」

「そうかもな」

ハヤトが剣を受け止める。

「でも、それに抗うのも人間だ!」

内部空間で激戦が始まる。

トミーはゴリアテ群を撃破。

ハヤトはバラキームと斬り結ぶ。

その最中。

『幻想制御プログラム装置を破壊しました!』

ガイアの声。

景色が崩壊する。

森がノイズとなり、青空が割れ、内部の金属壁が露出する。

巨大な有機機械の内臓が蠢いていた。

「出口を作る!」

トミーがコバルト弾を装填。

一撃。

装甲壁が爆砕する。

二人は脱出。

上空。

フェニックスファイターが降下する。

ハヤトは機体へ飛び乗る。

「一気に終わらせる!」

ニュートリノレーザー。

プラストミサイル連射。

機械獣が咆哮する。

最後の切り札。

「オールレンジ・ガンマドライバー!」

雷光を纏ったフェニックスが突撃。

超振動エネルギーが中枢コアを貫く。

機械獣は都市の上空で大爆発を起こし、崩壊した。

炎が消える。

残ったのは、ただの廃墟。

トミーが肩を回す。

「とんだパラダイスだったね」

ハヤトは静かに言う。

「楽園の中心には、毒があるってな」

ガイアが分析を続ける。

『欲望共鳴波は、人間の脳内報酬系を直接刺激していました。
 依存状態に陥れば、抵抗意志は消滅していたでしょう』

トミーは苦笑する。

「欲に負けるのは、人間の性か……」

ハヤトは空を見上げた。

「でも、それに勝つのも人間だ」

遠く宇宙で、ハイデビロン帝国は次の侵略計画を進めていた。

心理侵略は失敗した。

だが敵は、より深く、人間の本質を研究している。

地球は守られた。

だが――

次に試されるのは、
人類の“何”なのか。

つづく

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