SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第13話

小さな赤い目の恐怖 前編

深夜零時。

都市が眠りに落ちたその瞬間、
地下では別の生命が目覚めていた。

下水道の暗闇を、無数の赤い光が走る。

それは一つではない。
群れを成し、統率されたように整然と移動している。

カサカサ、と乾いた音。
湿ったコンクリートを蹴る小さな足音。

やがてその赤い目の群れは分岐点で分かれ、
それぞれが異なる目的地へと向かった。

――軍事基地。
――エネルギー制御施設。
――科学研究工場。

到達した瞬間。

小さな身体が、建物の基礎部へ潜り込む。

そして――閃光。

轟音が夜を引き裂いた。

地上の人々は、眠りから叩き起こされる。

「な、なんだ!?」
「爆発だ!」

二次爆発、三次爆発。

都市機能の中枢が、まるで内側から食い破られるように崩壊していく。

だが――敵の姿を見た者は、誰もいなかった。

スターフォースは、被害現場へ急行した。

焦げたコンクリート。
吹き飛んだ地下配管。
だが爆発の中心は明らかに――地中。

トミーがしゃがみ込み、破片を拾い上げる。

「……これは外からの爆撃じゃないね」

ダイスケも頷く。

「内部爆発だ。しかも極めて小規模な爆薬を複数箇所に配置している」

「ってことは……」

ハヤトが地下へ視線を向ける。

「地下からか」

その時、足音が近づいた。

「君たちがスターフォースか?」

振り向くと、軍服姿の青年が立っていた。

無駄のない体躯、鋭い目。
だが、どこか親しみやすい雰囲気を持っている。

「地球連合・陸軍大尉、ジェイ・クライスターだ」

「二十七歳だ。君たちとそう変わらん」

リサが軽く笑う。

「ほんとに? ぜーんぜん若く見える」

ジェイは苦笑した。

「光栄だな」

だが、彼の視線は鋭いままだった。

「今回の件、敵の仕業と見ていいだろう。
問題は“どうやって”だ」

「地下網を使ってる可能性が高いですね」

ダイスケの分析に、ジェイは深く頷いた。

「こちらでも調査を進める。
だが警戒レベルは最大に上げるべきだ」

彼の目には、ただの軍人以上の鋭さがあった。

ハイデビロン帝国・地球戦略要塞

暗い司令室。

三将軍の冷たい視線が交差する。

「前回の作戦は失敗でしたね」

アルトゥールの皮肉に、シュルキーレフが顔を歪める。

その空気を断ち切るように、パクキャンサー大佐が一歩前へ出た。

「将軍、よい策がございます」

映し出されたホログラム。

そこにあったのは――ネズミ。

「この星に昔から生息する生命体。
数も多く、都市地下に広く分布している」

映像が拡大する。

脳内に埋め込まれた微細チップ。

「神経制御用ナノチップで行動を誘導し、
体内に埋め込んだマイクロ爆薬を遠隔起爆する」

「生体兵器か」

シュルキーレフが笑う。

「素晴らしい。進めろ」

一週間前

ゴリアテ部隊が、夜陰に紛れて何かを回収していた。

それを見ていた一人の少年。

「……あいつら、ネズミを……?」

思わず踏んだ枯れ枝が音を立てた。

振り向くゴリアテ。

「やべっ!」

少年は走った。

建物の壁を蹴り、塀を飛び越える。

だが、機械兵士は疲れを知らない。

転倒。

迫る鋼鉄の足。

(もうダメだ――)

その瞬間、閃光が走る。

ゴリアテが次々と撃ち抜かれた。

「大丈夫か?坊主」

立っていたのはハヤトだった。

少年は目を輝かせる。

「あんた……スターフォースだろ?」

「そうだ」

「知らせたいことがあるんだ!」

「ネズミだよ。あいつら、ネズミを捕まえて、どっかの穴に入れてた」

「穴?」

「うん。地下に通じてるみたいだった」

ダイスケの目が鋭くなる。

「……やはり地下網か」

ハヤトは決断する。

「俺たちで調べる」

少年は頷き、走り去った。

そして、下水道の入口を前に、リサの足が止まる。

「……ちょっと待って」

「どうした?」

「私は……」

言葉が途切れる。

暗闇から、かすかな音がする。

カサカサ……

ハヤトは振り返る。

「俺が行く」

「危険よ」

「放っておけるか」

彼は迷いなく、地下へと降りていく。

リサは、その背中を見つめていた。

――暗闇。
――小さな赤い目。

それは、すぐそこまで来ている。

つづく

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