狙われたヒノモト皇国 前編
ハイデビロン帝国軍から突きつけられた要求は、あまりにも明白だった。
――超重戦闘マシン三機の引き渡し。だが、ヒノモト皇国はその要求を、ただ一言で拒絶した。
「ほほう……」
通信モニター越しに、バラキーム大佐は優雅に微笑んだ。
「私の要求は呑めない、と? いいでしょう。
では、首都トーキョーシティを、全軍をもって攻撃して差し上げましょう」声には怒りよりも、愉悦が滲んでいた。
「そうなれば……やつらも、自ずと姿を現さざるを得ない」
その命令と同時に、ドクトとトンへの部隊が首都へ雪崩れ込んだ。
かつて未来都市として栄えたトーキョーシティは、瞬く間に炎と瓦礫に覆われていく。
防衛軍は必死に応戦したが、度重なる戦闘で戦力は消耗していた。
数で勝る侵略部隊に押し潰され、街は一つ、また一つと沈黙していく。廃墟と化した通りを、ロボット兵士ゴリアテが無感情に進み、
逃げ惑う市民を次々と撃ち倒していった。――その光景を、誰も止められずにいた。
一方、無人島海底基地。
スターフォースの三人
――ハヤト、ダイスケ、トミーは、医務室で静養していた。
だが、静かな室内に、落ち着きはなかった。「なあ、ダイスケ」
ベッドに横になったまま、ハヤトがぽつりと呟く。
「なんだ?」
「……あの超重戦闘マシンだけどさ」
ダイスケは片眉を上げた。
「どうした? まさか、ビビってるのか?」
「違う!」
即座に否定しつつ、ハヤトは視線を天井へ向けた。
「精神エネルギーと同調して戦うって話だろ?
今みたいな状態で、また襲われたら……ちゃんと戦えるのかって、考えただけだ」「珍しいな。お前がそんなこと言うなんて」
「俺だって考える時は考えるんだよ」
その時、隣のベッドから声がした。
「いやあ~、感動的な友情トークだねえ」
トミーだった。
「起きてたのかよ」
「半分ね。うるさくて寝たフリしてたけど、実はさっきまで気絶してた」
「どうせ、看病してもらおうと思ってたんだろ?」
「いやあ~、バレたか」
三人の間に、束の間の笑いが戻る。
だが、その空気は、すぐに張り詰めたものへ変わった。
司令室。
リサは、スクリーンに映る戦況データを睨みしめていた。
「艦長……いつまで、待つつもりですか?」
「今は無理よ」
アンナ艦長は、苦しそうに言った。
「彼らは、まだ戦える状態じゃない」
「でも、このままじゃ首都が……ヒノモト皇国が落ちます!」
沈黙の後、ジンダイジ博士が静かに口を開いた。
「ヒノモト皇国は元々、高度なテクノロジーを持つ国じゃ。
そう簡単には滅びん……だが」その言葉を遮るように、リサの声が鋭く響いた。
「敵艦隊を捕捉! 下部に……ミサイルを確認!」
博士の顔色が変わる。
「……核ミサイルだ」
「核……!?」
司令室に、凍りつくような沈黙が走った。
その時、医務室からインターコムが鳴った。
《艦長》
ハヤトの声だった。
《俺たち、いつでも出られます》
《許可を》
《もう、休んでる場合じゃないでしょ?》
アンナ艦長は目を閉じ、一瞬だけ迷いを見せた。
「……分かっているのよ。敵の狙いが、あなた達だってことも」
《それでも行きます》
ハヤトの声は、揺るがなかった。
《俺たちが出なきゃ、ヒノモト皇国が終わる。
それじゃ……男が廃る》「まったく……」
艦長は小さく息を吐いた。
「発進を許可するわ」
「艦長、それは――」
「無茶よ。でもね」
アンナ艦長は微笑んだ。
「今の彼らは、誰にも止められない」
こうして、スターフォースは再び発進した。
その頃、ヒノモト皇国上空では、
核ミサイルが、静かに照準を定めていた。迫り来る核の恐怖。
崩れゆく首都。
それでも、防衛軍は戦い続けていた。――スターフォースが戻ってくる、その瞬間を信じて。
彼らは、間に合うのか。
ヒノモト皇国を、滅びから救えるのか。銀河大戦は、さらに深い闇へと踏み込んでいく。
つづく