拉致された家族を救え! 前編
ハイデビロン帝国地球侵略軍・前線基地。
冷たい金属の床に、アルトゥール将軍の靴音が響いた。
「……バラキーム、いるか?」
「はっ。ここに」
優雅に一礼するバラキーム大佐。その態度は、戦場に立つ軍人というより、舞台に立つ役者のようだった。
「未だに抵抗を続けているヒノモト皇国へ向かえ」
「住民を拉致し、プリンシパリティ号を誘き寄せるのだ」バラキームの唇が、ゆっくりと歪む。
「ヒノモトは技術力のある国だ。今のうちに叩いておく必要がある」
「それに……」アルトゥール将軍の目が光る。
「スターフォースの家族も、あの国にいるらしい」
「一石二鳥というわけだ」「お任せを」
バラキームは胸に手を当て、芝居がかった仕草で言った。
「華麗に、美しく――あの者どもを始末してまいりましょう」
無人島海底・銀河連邦軍科学技術研究所。
巨大な格納庫に並ぶ超重戦闘マシンの前で、ハヤトは立ち尽くしていた。
「……これが、俺のマシン……」
赤と金を基調とした機体。
その名を、フェニックスファイター。「勝手に触らないでください」
冷静な声が飛ぶ。
「まだ調整中です」
「わりい、わりい」
ハヤトは頭を掻いたが、視線は機体から離れなかった。
研究所司令室では、アンナ艦長とジンダイジ博士が向かい合っていた。
「クロッペンシュタイン博士は、お元気ですか?」
「ええ。異星人が現れてから、この超重戦闘マシンの完成をずっと待っていました」
ジンダイジ博士は、深く息をついた。
「異星人の科学力は、我々の想像を超えている」
「すでに、この星の一部は侵略され、防衛は限界に近い」「それでも――」
アンナ艦長は、はっきりと言った。
「私たちは、人類を守ります」
博士は、静かにうなずいた。
「……頼みましたよ、艦長」
ヒノモト皇国・トウキョーシティ。
突如、平和な空を切り裂く轟音が響いた。
機械獣ペクチョーン。
その巨体が街を踏み潰し、ドクトとトンへが無差別に攻撃を浴びせる。「虫けらどもを、拉致せよ!」
バラキーム大佐の命令とともに、
銀色のロボット兵士ゴリアテたちが住民を捕らえていく。抵抗する術は、なかった。
やがて――
その光景は、全世界に向けて放送された。
研究所司令室。
「艦長……」
リサの声が震えていた。
「ヒノモト皇国で、住民が拉致されています」
「オンスクリーン」
映し出されたのは、焼け焦げた街。
瓦礫の中で、泣き叫ぶ人々。アンナ艦長は、画面から目を離さず言った。
「……ハヤト」
「あなたの家族も、拉致されたようよ」その瞬間――
ハヤトの中で、何かが切れた。「あいつら……絶対に許さねえ!」
拳を握り締め、叫ぶ。
「艦長!!」
「スターフォース、出動!」
「任せろ、ハヤト!」
「俺たちが一緒だ!」
ダイスケとトミーが即座に応じた。
「作戦はこうだ」
ハヤトは短く説明する。
「海中から接近し、泳いで上陸」
「拉致された人々を奪還する」「じゃあ、俺のシャークマリンの出番だな」
トミーが笑った。
「準備はできています」
ガイアの声が続く。
スターフォースは、海底を進み、湾岸近くで上陸した。
建物の周囲には、無数のゴリアテ兵。
「俺が行く」
ハヤトが前に出ようとする。
「待て」
ダイスケが肩を掴んだ。
「俺とトミーで、あいつらを引きつける」
「その隙に、お前が中の人を救え」「……すまない」
「気にすんな」
「行け、ハヤト!」
二人はフェイザーガンを撃ちながら、敵中へ突っ込んだ。
ハヤトは通信を入れる。
「リサ、デリンガーを転送してくれ」
「了解。デリンガー発進」
「ドリルガルガリン、チェンジ!」
地中を掘り進み、監禁室へ。
「みんな、早く逃げて!」
そこに――
母の声がした。「……ハヤト……」
「……無事でよかった……」
だが、再会の時間は短かった。
「ダイスケ! トミー! 人質は救出した!」
「グッジョブ――うわっ!!」
「どうした!?」
「機械獣が出た!」
ハヤトは、歯を食いしばった。
「今、そっちに行く!」
合流した三人の前に現れたのは、バラキーム大佐。
「ふふふ……」
「わざわざ殺されに来たか、スターフォース諸君」「お前が……家族を拉致したのか!」
「私の名はバラキーム」
「拉致は、君たちを誘き寄せるための“餌”だよ」「許さねえ!!」
ハヤトは剣を振るうが、華麗にかわされる。
「その程度ですか?」
バラキームは、嘲笑う。
「相手は、私ではない」
「ペクチョーンが務めてあげましょう」そう言い残し、姿を消した。
「ちくしょう……!」
街を蹂躙する、機械獣ペクチョーン。
ハヤトは通信を入れる。
「リサ! フェニックスファイターを出してくれ!」
「了解。フェニックスファイター、発進!」
卑劣な罠。
怒りに燃える心。
そして、ついに投入される新型機。ハヤトは、フェニックスファイターへと向かう。
戦いは、これからだ。
つづく