SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第5話

地球へ

プリンシパリティ号の前方スクリーンいっぱいに、地球が映し出された。

それは――
彼らが知っている地球ではなかった。

かつて、深い青と白い雲に包まれていた美しい惑星は、
今や所々が赤茶色に染まり、まるで病に侵されたように歪んでいた。

侵略の爪痕。
ハイデビロン帝国によって蹂躙された大地の色。

「……うそ……」
リサの声が、かすれてブリッジに落ちた。

「これが……地球なの……?」

誰もすぐには答えられなかった。

「そ、そんな……」

ハヤトは、無意識のうちに拳を握り締めていた。
脳裏に浮かぶのは、地球に残してきた家族の顔。

彼らは無事なのか。それとも――。

「……なんだよ、これ……」
トミーの声には、怒りと困惑が混じっていた。

「クッ……異星人め……」
ダイスケは歯噛みし、視線を逸らす。

「これは……まさに、脅威ですね」
ガイアの冷静な分析が、逆に現実の残酷さを際立たせた。

「感傷に浸っている暇はないわ」
アンナ艦長の声が、ブリッジの空気を引き締める。

「これより地球へ降下を開始する」
「総員、大気圏突入の衝撃に備えよ!」

「ラジャー!」

全員が応じたその声には、もはや迷いはなかった。
彼らは、覚悟を決めていた。

その頃。
地球軌道上、ハイデビロン帝国地球侵略軍司令部。

アルトゥール将軍は、巨大なスクリーンに映る一隻の戦艦を見つめていた。

「ククク……」

低い笑いが漏れる。

「ここを、貴様らの墓場としてやる」

それは、獲物を待つ捕食者の眼だった。

プリンシパリティ号は、荒廃した大地に降り立った。
最初に向かったのは、地球連合軍基地。

だが、そこにあったのは――
基地と呼ぶにはあまりにも無残な、瓦礫の山だった。

焼け落ちた建造物。
崩れた防壁。
沈黙だけが支配する空間。

「……ひどい……」
リサは、思わず声を漏らした。

「ああ……」
ハヤトは、視線を前に向けたまま言った。

「それほど、ヤツらの力が強大だってことだ」

アンナ艦長は、すぐに指示を出す。
「ハヤト、トミー。基地内の生存者を確認」
「ダイスケ。基地周辺に敵兵が残っていないか、監視を続けて」

「ラジャー!」

特殊装甲車両デリンガーは、瓦礫を避けながら基地内へと進んでいく。
ハヤトとトミーは、トライコーダーを手に、慎重に歩を進めていた。

だが、検知されるのは――
生命反応ではなく、死の静寂ばかり。

倒れた兵士たち。
無言のまま、戦いの終わりを物語る亡骸。

「……なーんてこったよ」
トミーが吐き捨てるように言う。

「誰もいないのかよ……」
「……まぁ、あれだけの被害だ。いる方がおかしいか……」

「いや」

ハヤトは首を振った。

「ヤツらのこと、少しでも知る必要がある」
「それに……万に一つでも、生存者がいたら、話が聞けるかもしれない」

二人は、基地最深部――司令室へと向かった。

瓦礫で塞がれた司令室の入口。
その前で、トライコーダーが反応を示した。

「……ハヤト」
トミーの声が緊張を帯びる。

「ここに……誰かいる」

「生存者か……!」

だが、扉は開かない。

「ちょっと待ってろ」

トミーはフェイザーガンを抜き、
扉横のセキュリティボックスを数回撃ち抜いた。

小さな爆発。
生まれたわずかな隙間。

「今だ!」

二人は同時に体当たりし、力ずくで扉をこじ開けた。

司令室内部は、奇跡的に原形を留めていた。

床に倒れている、一人の人影。

「おい! 大丈夫か!」

トミーが駆け寄る。

「……うっ……」

かすかな呻き声。

「生きてる!」

ハヤトは、すぐに通信を入れた。

「艦長! 生存者を一名発見しました!」

「了解。すぐに連れてきて、手当てを」

二人は、怪我人をそっと支え、出口へと向かった。

地球は、壊され続けていた。

かつて人類が誇った防衛網は、ほぼ壊滅。
絶望の中で、かろうじて生き残った、たった一人の兵士。

だが――
その“たった一人”が、希望になるかもしれない。

この美しい地球を救えるのは、もはや――
戦艦プリンシパリティ号しかないのか。

答えは、まだ誰にもわからない。

だが、戦いは始まったばかりだった。

つづく

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