SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第4話

脅威の機械獣ヤンバーン出現!

ハイデビロン帝国の暗黒要塞に、冷たい沈黙が満ちていた。

玉座の間に立つメフィストス将軍は、深く頭を垂れていた。

――駆逐艦隊、全滅。

その言葉の重さが、空間を押し潰す。

「銀河連邦軍が、あのような戦艦を隠していたとはな……」

三神官のひとり、ディアマンテスが低く呟いた。

その声には驚愕と、そして、わずかな苛立ちが滲んでいる。

「我々は、地球人を甘く見すぎていたようですな」

エラントラは、宰相席に背を預けたまま、薄く笑った。

「ゆえに――知る必要があります。彼らの力の限界を」

その視線が、メフィストス将軍に向けられる。

「例の“切り札”を、実戦に投入してみては?」

一瞬の沈黙の後、ディアマンテスがゆっくりと頷いた。

「……なるほど。あれならば、あの戦艦も耐えきれまい」

「メフィストス。戦艦プリンシパリティ号を必ず沈めよ」

「御意に」

将軍は踵を鳴らし、冷酷な微笑を浮かべる。

「――バクテリアン機械獣ヤンバーン、出動!」

一方その頃。

プリンシパリティ号は月軌道へと進路を取り、
静かな宇宙を滑るように進んでいた。

月面アルテミス基地から届いた救難信号。

それは、戦闘によるものではなく、内部異常を示す、不可解な内容だった。

「しかし……あの主砲の威力は、正直すごかったよな」

ブリッジで、トミーが感嘆混じりに言う。

「だがな」

操縦席のハヤトは、視線を前に向けたまま答えた。

「あれは切り札だ。使えば、こちらは無防備になる」

「イージスも切れるし、回避もできない。諸刃の剣さ」

アンナ艦長は、月面基地が視界に入ったのを確認し、指示を出した。

「アルテミス基地到着」

「ハヤト、ダイスケ、リサ、ガイア。調査と救助に向かって」

基地内部は、奇妙なほど静まり返っていた。

外部からの砲撃痕もなく、破壊の痕跡もない。

だが――生命の気配が薄い。

薄暗い医務室で、かろうじて補助電源が稼働していた。

一人の医師と医療ロボットが、意識のない兵士を必死に治療している。

「わからないんです……」

医師は疲れ切った声で語った。

「メインコンピュータが、何者かに侵入された」

「この基地のセキュリティは、最高レベルだったのに……」

ガイアは、すでに端末に接続していた。

「増殖型ニューラル・ネットワーク・ウィルス」

「ネットワーク内部で自己学習・自己拡張する、極めて高度な存在です」

それは、単なる破壊ではない。

知性を持った侵略だった。

その時――。

「艦長! 左舷前方にホールド磁場反応!」

ブリッジのトミーの声が、鋭く響いた。

「ギャラクシー級――ミハイルコルドゥーン号です!」

アンナ艦長は即座に判断する。

「緊急体制レベル2」

「ハヤト、敵襲来。直ちに帰還せよ!」

スターフォースが発進した直後、異変は起きた。

未確認飛行物体――それは、空中で不気味に変形し、
恐竜型の巨大機械獣へと姿を変えた。

「……なんだ、あれは」

ハヤトの声が、かすかに震える。

機械獣ヤンバーン。

圧倒的なパワーと機動力を併せ持ち、スターフォースを容易く捕らえる。

月面基地アルテミスは、次々と破壊されていった。

瓦礫が舞い、施設が砕け散る。

それは戦闘ではない。

一方的な蹂躙だった。

「牛耳ったぞ……プリンシパリティ号」

ミハイルコルドゥーン号のブリッジで、メフィストス将軍が嗤う。

「観念するがいい!」

「……このままじゃ、終わらねえ」

ハヤトは歯を食いしばった。

「必ず……どこかに弱点があるはずだ」

彼は瓦礫の隙間へとヤンバーンを誘導する。

「ガイア! ポイントFだ!」

「プラズマイオン砲、用意!」

「了解しました」

急反転。急上昇。

「――今だ!」

閃光が走った。

次の瞬間、機械獣ヤンバーンは爆発炎上し、月面に崩れ落ちた。

「ヤンバーン、撃破……」

「ドクト、トンへ部隊も全滅です」

報告を受け、メフィストスは静かに目を閉じた。

「……退却する。ホールド開始」

戦いは終わった。

だが、勝利とは言えなかった。

月のアルテミス基地は、無残な瓦礫と化していた。

救えなかった命。守れなかった場所。

ハヤトは、拳を握りしめたまま、何も言えなかった。

プリンシパリティ号は、地球へと向かう。

青く輝くその星は、もうすぐ視界に入る。

だが、そこに待つのは希望か、それとも――

人類を救えるのは、ただ一隻。

戦艦プリンシパリティ号だけだった。

つづく

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