SF小説 銀河大戦

銀河大戦 第2話

ファーストコンタクト

ハイデビロン帝国――その中枢に位置する、帝王キング・バアル神殿。

黒曜石の床と血のように赤い光に満たされた巨大な神殿では、
地球連合軍を壊滅に追い込み、
地球侵略計画の第一段階を成功させたことを祝う祭儀が執り行われていた。

金牛の頭を持つ巨大な神像が、神殿の奥で不気味な存在感を放っている。

その足元に集うのは、三神官――ハイデビロン帝国の宗教と軍事、
そして、政治を司る絶対的支配者たちだった。

神殿内には、異形の兵士たちとともに、戦車のような巨大兵器が幾重にも整列している。

それらは、全て生き物と機械の境界が曖昧な、ハイデビロン独自の戦闘兵器だった。

三神官のひとり、大祭司ディアマンテスが、両腕を天に掲げ、高らかに宣言する。

「我々ハイデビロンの時代が、ついに到来した!」

歓声とも咆哮ともつかぬ声が、神殿を揺るがした。

続いて、三神官の巫女――シルビアが一歩前に進み出る。

美しくも妖艶なその姿から、甘く、しかし、背筋を凍らせるような歌声が流れ出した。

歌は次第に調子を変え、神託の言葉へと変貌する。

シルビアの瞳は虚ろになり、声色が低く、威圧的なものへと変わった。

「……我が帝国に歯向かう者は、すべて抹殺せよ……」

それは、帝王キング・バアル自身の言葉だった。

三神官の宰相、エラントラが一歩前へ出る。

「メフィストス将軍」

呼びかけに応じ、黒い甲冑に身を包んだ将軍が膝をついた。

「艦隊を率い、火星にある銀河連邦軍基地を殲滅せよ」

「御意」

メフィストス将軍は立ち上がり、即座に艦隊の編成を命じた。

ハイデビロン艦隊は、静かに、しかし、確実に火星へと向かっていった。

その頃――火星を出発した宇宙戦艦プリンシパリティ号の艦内では、
最終チェックが進められていた。

最新鋭の兵装、艦内システム、
そして、艦載戦闘機――スターホーク零(ゼロ)。

整備ハンガーで、ダイスケは一人、戦闘機のデータを次々と確認していた。

「核融合コアエンジン搭載……推力比、異常なし」

彼の目は輝いている。

「スーパーバイザリVR制御か……なるほどな。
 CICアクティブ制御ステルスまで完備とは」

指を止め、満足そうにうなずいた。

「……大体、分かった」

一方、ブリッジ近くでは――

「では次に、プリンシパリティ号の主砲システムについて説明します」

ガイアの淡々とした声が続く。

「エネルギー供給は――」

「……zzz」

ハヤトは席に座ったまま、必死にまぶたと戦っていた。

「ハヤト。意識レベルが低下しています」

「だ、大丈夫だ……聞いてる……」

完全に説得力のない返事だった。

その少し離れた場所では、トミーがドリンクを手にリサへ近づいていた。

「リサさん、喉乾いてない?」

「ノーサンキュー」

即答だった。

「……そ、そう」

艦内は、一見すると和やか――だが、どこかぎこちない空気が漂っていた。

そのとき。

「艦長」

ガイアの声が、いつになく鋭く響いた。

「前方宙域に、大量の高速戦艦反応。急速接近中です」

ブリッジの空気が一瞬で凍りつく。

「総員、戦闘配置!」

アンナ艦長の声が響いた。

「緊急戦闘態勢を発令する。全員、持ち場につけ!」

警報が鳴り響く中――
空間が歪み、まるで宇宙そのものが裂けるかのように、敵艦隊が出現した。

――超高速ワープアウト。

メフィストス艦隊だった。

「全通信回線を開け」

アンナ艦長は即座に指示を出す。

「ここは銀河連邦の宇宙域である。侵入者に告ぐ。直ちに退去せよ」

同じ警告を、三度繰り返した。

数分の沈黙。

「……敵旗艦から通信を受信」

リサが報告する。

「オンスクリーン」

ブリッジの大型ディスプレイに映し出されたのは、マスクに覆われた異様な顔だった。

「我々は、ハイデビロン帝国メフィストス艦隊」

低く、感情の読めない声。

「我々に歯向かう者は――抹殺する」

一方的に告げると、通信は切断された。

直後。

敵艦隊から、無数の光が放たれる。

「来るぞ!」

「回避運動、急げ!」

人類とハイデビロン帝国――
それは、避けられぬ戦争の、最初の接触だった。

つづく

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