ファンタジー小説 銀河漂流記

銀河漂流記 第19話

古代人からの伝言

眩い光の中で、金髪の女性は静かに微笑んでいた。

「よくきましたね。我が子孫たちよ」

ナオトが一歩前に出る。

「あなたは……誰なんですか?」

女性は、ゆっくりと頷いた。

「私たちは、エンシェント。あなたたちの、遠い祖先です」

メグミが小さく息をのむ。

「祖先って……どういうこと?」

アミカが視線を上げる。

「まさか……地球の……?」

女性は静かに答える。

「かつて、あなたたちが“地球”と呼ぶ星は、“テラ”と呼ばれていました」

「そして、そこに生きる人々は、テラン人」

ナオトの目が見開かれる。

「テラン人……?」

「ええ。私たちは銀河において、四大種族の一つでした」

キョースケが腕を組んだまま鼻で笑う。

「ずいぶん大層な話だな」

女性は気にも留めず、語り続ける。

「しかし、銀河は、争いに満ちていました」

空間に、淡い光の映像が広がる。

星々の間を行き交う艦隊。

衝突、爆発、崩れていく文明。

メグミが思わずナオトの袖をつかむ。

「これって……」

「銀河大戦……」

ナオトが呟く。

女性は静かに続ける。

「私たちは滅びを避けるため、移民船団を編成しました」

「そして、銀河の各地へと拡散したのです」

アミカが、星図を見上げる。

「この航路……それが、スターゲイザーのネットワーク……」

「その通りです」

女性の言葉と同時に、星図が脈動する。

「私たちは、移住先の各地に“ゲイト”を設置しました」

「それが……スターゲイザー」

ナオトが息をのむ。

「じゃあ、このオケアノスは……」

「都市型宇宙移民船」

間髪入れずに答えが返る。

「そして、あなたたちが“リバイアサン”と呼ぶもの――」

女性の背後で、巨大な核が強く光る。

「それは、兵器ではありません」

「スターゲイザーを制御する中核動力システムです」

メグミがぽつりと呟く。

「全部、つながってるんだ……」

女性は、穏やかに頷いた。

「この惑星シオンも、移住先の一つ」

「ここに生きる人々もまた……テラン人の子孫です」

アミカが静かに言う。

「じゃあ……私たちと……」

「同じ起源を持つ存在」

女性の声が、柔らかく響く。

「あなたたちは、兄弟なのです」

沈黙が落ちる。

メグミがぽつりと笑う。

「だから、なんか似てるって思ったんだ」

ナオトは何も言えず、ただ星図を見つめる。

やがて、女性は少しだけ視線を遠くへ向けた。

「しかし、私たちは、過ちを犯しました」

光景が変わる。

統一を掲げる声。

従わぬ者への圧力。

崩れていく秩序。

「平和を守るための力は、やがて支配のために使われた」

アミカが目を伏せる。

「同じだ……」

ナオトが静かに続ける。

「力があるほど……そうなるのか……」

女性は頷く。

「争いは、力では終わりません」

「むしろ、増幅されるのです」

キョースケが低く笑う。

「だったら、徹底的に支配すればいいだけだろ」

その言葉に、一瞬だけ空気が張り詰める。

だが、女性は否定も肯定もしない。

「それが、私たちの選んだ道でした」

そして、静かに言葉を続ける。

「だからこそ、私たちは、このシステムを封印しました」

ナオトが顔を上げる。

「封印……?」

「スターゲイザーは、再び争いを生む力になり得る」

「故に……」

女性の声が、少しだけ強くなる。

「この力は、子孫たちが“選ぶ”まで、眠り続けるようにしたのです」

メグミが小さく言う。

「選ぶって……何を?」

女性は、まっすぐに四人を見つめた。

「争うのか」

「それとも……争わないのか」

静寂。

ナオトの胸が強く脈打つ。

アミカは目を閉じ、言葉の重さを噛みしめる。

メグミは、ただ仲間たちの顔を見る。

キョースケは、何も言わない。

女性は、ふっと微笑んだ。

「あなたたちは、ここまで辿り着いた」

「それだけで、十分な資格があります」

ゆっくりと手を差し出す。

「この力を……あなたたちに託します」

その瞬間、光が強く弾けた。

ナオトたちは、思わず目を細める。

やがて、光は収まり――

女性の姿が、ゆっくりと透けていく。

最後に、静かな声だけが残った。

「選びなさい」

「未来を」

そして、完全に消えた。

静寂。

誰も、すぐには口を開けなかった。

やがて、ナオトが小さく呟く。

「どうする……?」

アミカは静かに答える。

「簡単じゃないわね」

メグミは少しだけ笑う。

「でも……争うのは、やだな」

その時。

キョースケが一歩、前に出た。

リバイアサンの核を見上げる。

そして、口元をわずかに歪める。

「面白いじゃないか……」

その言葉と同時に、核が強く脈打った。

まるで――応えるかのように。

つづく

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