思いの果て
古代都市オケアノス――
しばらく、見つめ合うナオトとキョースケ。
キョースケが最初に口火を切った。
「なんだ? これは?」
ナオトが冷静に答える。
「銀河を移動するための《銀河ネットワーク》だよ」
続いて、アミカが補足して説明する。
周囲を見渡すと、半ば崩れた石柱や苔むした壁面の間に奇妙な装置が埋め込まれていた。
光を帯びた円盤、無数の浮かぶ文字、そして細かく刻まれた凹凸――
それらは、地球の技術では到底理解できそうにない代物だった。
アミカが近づき、指先で文字をなぞる。
「これ……文字が神代文字に似てるわ」
「この装置、三神官の聖杖で動作するように書かれている……」
アミカの瞳が、光を反射して鋭く光る。
彼女の頭の中では、古代文明と現代文明を結びつける推論がぐるぐると回っていた。
メグミは少し後ろに下がり、二人を見守る。
「わかんないけど、なんだか、すごい場所ね……」
小さな声に緊張と興奮が混ざる。
彼女は自然と両手を握り、静かに呼吸を整える。
場の空気の異質さに気圧されつつも、仲間の側にいることで安心感を得ていた。
その時――
静かな通路の向こうから重い足音が響く。
キョースケと黒髪の少女、幻影魔女メハシェファが現れた。
二人は装置の前に立ち、アミカのすぐ横に位置する。
キョースケは腕を組み、いつもの自信たっぷりの表情を崩さない。
だがー
その視線は護衛のマルデューク兵たちに向けられた威光で、
その場の空気を圧するだけで、装置や文字には特に興味を示さない。兵たちは無言で跪き、微動だにしない。
メハシェファは静かに微笑み、全てを知っているかのように文字を見つめる。
言葉は発さない。
だがー
その存在だけで周囲の空間は、ひんやりと引き締まる。
「私たちの太陽系も、このネットワークに含まれているわ」
「ということは……俺達の宇宙に帰れるかもしれないということか!?」
「まだ、わからないことだらけだけど、可能性はあるね」
と、ナオトは周りの装置を観察しながら答える。
ナオトは少し深呼吸し、気を取り直す。
「よし、聖杖をセットしてみようか」
彼の手が震えるのは、未知の装置に触れる恐怖ではない。
むしろ、これが世界を変える力になるかもしれないという期待と緊張であった。
三神官の聖杖を丁寧に装置のスロットに置くと、装置が微かに振動し光を帯び始める。
「光……?」
メグミは小さく息を呑む。
光は装置から床、壁、そして空気そのものに広がり、まるで都市全体を包み込むようだった。
地面がゆっくりと揺れ動く。
半地下に埋もれていた遺跡都市オケアノスが、重厚な音を立てながら浮上を始める。
その姿は、まるで巨大な宇宙船そのものだった。
ナオトは目を細め、装置の各部位を観察する。
「これは……星間航行装置……スターゲイザー……まさか、こんな大規模だとは」
アミカは隣で、古代文字を読み取りながらうなずく。
「これなら、銀河を移動できる……本当に、私たちの太陽系も含まれているのね」
リバイアサンの中心から脈打つ光が、まるで生命を宿すかのように四人の間で揺れる。
そして、空間にフォログラムが浮かび上がる。
ナオトたちにそっくりな姿の人物たち――
金髪の中年女性の姿が、ゆっくりと浮かび上がった。
「よくきましたね。我が子孫たちよ」
ナオトは息をのむ。心臓が高鳴る。
アミカは軽く手を握りしめ、言葉を失った。
メグミは小さく肩を震わせ、半ば呆然とその光景を見つめる。
キョースケは腕を組み、フォログラムを睨むでもなく、威光で兵たちの敬意を集める。
その威光は、装置の前で静かに存在感を放ち、場の重力のように空間を支配していた。
だが、全員が知る。
このリバイアサン――
そして、スターゲイザーは、ただの兵器ではなかったのだ。
世界を変える力が、ここにあることを。
室内の淡い光の中、ナオトとキョースケの視線が交差する。
希望の光と支配者の威光。
二つの力が、静かにぶつかり合う。
そして、リバイアサンの動力核は眩く脈打つ。
ナオトの胸には期待と恐怖が入り混じる。
「これが……銀河間の道標なのか……」
アミカは心の奥で、未来への責任を感じていた。
メグミはただ、そばにいる仲間のために息を整える。
そして、全員の視線は、未知の未来への問いに向けられる。
つづく