SF小説 銀河世紀

銀河世紀 第11話

カイア橋の激突

帝都焼却から数か月、銀河は静まり返っていた。

だがそれは、嵐の前の静寂だった。

反帝国連合の盟主、レグルス・アウレリウス公は、新たな決断を下す。

「アルカディア星域を掌握する」

アルカディア、帝国時代最大の軍需工業圏である。

数百の造船ドック、補給惑星、兵站拠点が集まる銀河屈指の戦略星域だ。

ここを制する者は、銀河最大の軍事勢力となる。

だが、その星域を既に支配している人物がいた。

辺境戦争の英雄、白き艦隊を率いる男、アレクシス・ドラコニア。

彼は帝国の腐敗を憎み、自らの艦隊でアルカディアを守っていた。

しかし、レグルスにとって、それは障害に過ぎない。

反帝国の旗の下に集まった連合は、今や内部で牙を剥き始めていた。

アルカディア星域外縁、カイア橋宙域。

巨大なエネルギー構造体が、恒星間空間に架かっている。

それは、古代帝国が建設した巨大エネルギー橋である。

重力航路は一本、ここを通らねば、艦隊は星域に入れない。

ドラコニアは戦場を見据える。

彼の背後には、誇り高き精鋭、白色彗星機動艦隊。

白い装甲をまとった高速戦闘艦隊。

突撃戦術で銀河に名を轟かせた部隊だった。

ドラコニアは静かに言う。

「貴族の戦争ごっこを終わらせてやる」

そして、命令を下した。

「突撃」

白色彗星機動艦隊が動く。

高速巡洋艦群が、白い光を引きながらカイア橋を突破する。

その速度は常識外れだった。

レグルス艦隊の前衛が混乱する。

砲撃。

爆発。

巡洋艦が次々と撃破される。

突撃艦隊は止まらない。

橋を越え、敵陣へ突入する。

ドラコニアは確信する。

勝利だ。

その時、レグルス旗艦。

老臣が静かに進言する。

慎重派の参謀だった。

「殿下、後退を」

レグルスは眉をひそめる。

「逃げるのか?」

老臣は首を振る。

「誘い込むのです」

レグルスは一瞬沈黙する。

そして命じた。

「艦隊後退」

前線艦隊が後退を始める。

白色彗星機動艦隊はそれを追う。

深く、さらに深く。

カイア橋の中心宙域へ。

その瞬間、宇宙が閃光で満たされた。

カイア橋の両側に隠されていた巨大砲台が姿を現す。

重力加速対艦砲。

超長距離磁気加速砲。

数百門。

一斉射撃。

光の槍が宇宙を貫く。

白色艦隊の先頭艦が消し飛ぶ。

次の瞬間、さらに三隻。

五隻。

十隻。

突撃艦隊が次々と撃ち抜かれる。

ドラコニアの表情が凍る。

「……罠か」

砲撃は止まらない。

高速艦隊は接近できない。

距離を詰める前に撃破される。

突撃戦術は完全に封じられた。

白色彗星機動艦隊は崩れ始めた。

ドラコニアは歯を食いしばる。

「撤退」

艦隊は反転する。

カイア橋を離脱。

白い艦隊は半数近くを失っていた。

戦場に残るのは、無数の残骸。

そして勝者、レグルス艦隊。

老臣は静かに言う。

「戦いは、力だけでは勝てませぬ」

レグルスは、ゆっくり頷いた。

アルカディア星域は、彼の手に落ちた。

この戦いの報は、銀河を駆け巡った。

反帝国連合は、ついに内部戦争を始めた。

もはや同盟ではない。

それぞれが覇権を狙う群雄の時代。

遠く離れたヴァルディア星域。

ソレン・カイロは、その報を聞いていた。

彼は戦場にいなかった。

ただ、静かに呟く。

「銀河は、戦い方を変えた」

近距離突撃の時代は終わった。

これからは、戦略と兵站の戦争。

そして、もう一つの噂が広がる。

帝国艦隊を撃破した男。

辺境の戦場に現れた将軍。

名は――
ジーク。

まだ姿はない。

だが銀河は、その名を語り始めていた。

つづく

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