SF小説 銀河世紀

銀河世紀 第10話

灼熱の空環(アストラ・ライン)

連合艦隊、総数一八〇〇隻。

敗北の影を引きずりながらも、再び進軍する。

目標は帝都防衛最終外郭――アストラ・ライン宙域。

恒星を取り巻く人工重力環と、巨大な制御施設。

その中心には、恒星フレア制御兵器が沈黙していた。

「ここを抜けば、帝都は目前だ」

ソレンは戦術図を見つめる。

盟主レグルスは遠隔指揮。

慎重な布陣。

だが、今度は退けない。

帝国側旗艦。

そこに立つのは、セウェルス・アルカディウス。

漆黒の軍装。

無言。

彼は戦術表示を一瞥する。

「分断せよ」

その瞬間。

恒星表面が裂けた。

人工的に誘発された巨大フレアが噴出する。

磁気嵐。

重力乱流。

連合艦隊の陣形が引き裂かれる。

通信が乱れる。

艦隊は三つに分断された。

数の優位は消えた。

分断された中央戦域へ、帝国親衛戦略機動軍団が突入する。

先頭に立つのはセウェルスの旗艦。

その艦は常識外れだった。

機動速度、砲撃精度、回避演算――全てが規格外。

連合巡洋艦が一隻、また一隻と爆散する。

「なんだ、あれは……」

若手将軍が呻く。

ソレンは決断する。

「私が出る」

彼の旗艦が前進する。

さらに、二隻が並ぶ。

老将。

若き猛将。

三艦、並列。

三英。

ソレン艦が先制射撃。

若手将軍が突撃。

老将が側面支援。

完璧な三位一体。

だが。

セウェルスの旗艦は、まるで未来を読んでいるかのように動く。

直撃弾が当たらない。

逆に、若手将軍の艦が貫かれる。

爆発。

老将の艦も重損。

残るはソレンのみ。

セウェルスは通信回線を開く。

「秩序とは力だ」

低い声。

感情がない。

「お前たちは、過去だ」

ソレンは最後の砲撃を放つ。

至近弾。

だが、決定打にならない。

退避警報。

艦橋が揺れる。

「撤退だ!」

悔恨とともに、ソレンは戦域を離脱する。

帝都ノヴァ・カルタゴ。

皇帝はすでに移送済み。

住民は強制退去。

兵站資源も撤収。

ゲラシムは静かに命じる。

「焼却」

軌道上の帝国艦隊が照準を合わせる。

熱線。

都市が赤く染まる。

宮殿が崩れる。

軍事政庁が溶解する。

象徴は灰になる。

帝国は中枢を移す。

重力異常に囲まれた深層防衛星域。

天然の要塞。

そこに新たな首都が設けられる。

発表が銀河に流れる。

帝国は退いていない。

再編しているのだ。

廃都テラ・カピトリウム。

連合評議会は沈黙する。

帝都を奪えば勝利という構図が崩れた。

血統は戦場で意味を持たなかった。

数も意味を持たなかった。

若手将校が呟く。

「我々では勝てない」

その言葉に、誰も反論できない。

ソレンは静かに言う。

「……まだ終わっていない」

だが、その声は弱い。

銀河は見た。

帝国の新秩序。

力による支配。

そして、焼き払われた象徴。

秩序は崩れた。

古い秩序も、
新しい秩序も、
まだ、確立していない。

その隙間に、噂が流れる。

辺境で帝国艦を撃破した男がいる。

名は――ジーク。

まだ、姿はない。

だが、時代は彼を求め始めていた。

つづく

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