SF小説 銀河世紀

銀河世紀 第9話

銀河連合、集う

古代帝都――テラ・カピトリウム。

かつて、帝国創設が宣言された地は、今や半壊した廃都だった。

崩れた議事堂の円柱の間を、旗がはためく。

各星系の紋章。

そして、中央に立つのは、レグルス・アウレリウス公。

創設家系の直系。

白銀の礼装に身を包み、ゆっくりと演壇へ上がる。

「帝国は、法の上に築かれた」

その声は、よく通る。

「だが今、法は軍靴の下にある」

拍手。

だが、熱はまだ低い。

壇上の一段下に立つのはソレン。

檄を飛ばした張本人でありながら、盟主ではない。

血統が、政治を決めた。

「本日ここに、帝国秩序回復連合の結成を宣言する!」

連合艦隊、総数一八〇〇隻。

銀河は再び、内戦へ踏み出した。

評議会。

巨大ホログラムに映るのは戦略図。

帝国軍は要衝――
巨大リング要塞「カルディナ・ゲート」を固めている。

恒星重力圏に固定された金属の環。

その内側に艦隊を収め、外周に粒子砲列。

正面突破は困難。

「まずは兵站を整えるべきですな」

名門貴族が言う。

「帝国側の動向を見るのが賢明だ」

商業代表が続く。

ソレンは抑えきれず言う。

「時間を与えれば、敵は強化する」

沈黙。

レグルスは目を閉じ、慎重に言った。

「急ぐ必要はない。連合は始まったばかりだ」

その“慎重”が、のちに重く響く。

カルディナ・ゲート。

漆黒の艦隊が整列する。

先鋒を率いるのは、グナエウス・バルザック。

元鉱山労働者。

戦功のみで将官へ。

重装機動鎧を纏い、艦橋に立つ。

「連合は寄せ集めだ」

低い声。

「恐怖を教えてやれ」

彼は出撃を命じた。

連合側の若手提督が名乗りを上げる。

「我が艦隊五百隻で先鋒を務める!」

勇ましい宣言。

レグルスは頷く。

ソレンは、わずかに眉をひそめた。

カルディナ・ゲート宙域。

リング要塞の影から帝国艦隊が現れる。

整然。

無駄がない。

連合艦が突撃。

だが、次の瞬間、

要塞砲が閃光を放つ。

粒子砲の連鎖。

前列が蒸発する。

混乱。

そこへバルザック艦隊が突入。

接近戦。

白兵用強襲艇が連合旗艦へ。

艦橋で爆発。

若手提督は戦死。

わずか数時間。

五百隻は壊滅した。

廃都に報が届く。

「……壊滅?」

評議会がざわめく。

「やはり時期尚早だったのだ!」

「無謀だ!」

ソレンは拳を握る。

「次は私が出る」

しかし、レグルスは制した。

「焦るな。連合は一度の敗北で崩れぬ」

だが、兵士は違う。

敗北は伝播する。

“帝国は強い”

その言葉が広がる。

辺境アグリア宙域。

難民船団の間で囁かれる。

「カルディナで五百隻がやられた」

「だが、帝国巡洋艦を三隻落とした部隊がいるらしい」

「誰だ?」

「名は……ジーク」

詳細は不明。

傭兵か、流浪の将か。

ただ一つ。

帝国を撃ったという事実だけが残る。

夜。

廃都の塔からソレンは星を見る。

連合は大きい。

だが、重い。

レグルスは正統。

だが、遅い。

兵は強さを求める。

民は勝利を求める。

評議会の若手が囁く。

「必要なのは、決定的な英雄だ」

その言葉に、誰も否定できない。

遠く、カルディナ・ゲートでは、バルザックが静かに報告を受けていた。

「連合は脆い」

彼の視線の先。

だが、銀河は、まだ静かではない。

名もなき星々の間で、新たな名が広がり始めていた。

――ジーク。

まだ、姿はない。

だが、英雄を求める時代が、始まった。

つづく

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