銀河連合、集う
古代帝都――テラ・カピトリウム。
かつて、帝国創設が宣言された地は、今や半壊した廃都だった。
崩れた議事堂の円柱の間を、旗がはためく。
各星系の紋章。
そして、中央に立つのは、レグルス・アウレリウス公。
創設家系の直系。
白銀の礼装に身を包み、ゆっくりと演壇へ上がる。
「帝国は、法の上に築かれた」
その声は、よく通る。
「だが今、法は軍靴の下にある」
拍手。
だが、熱はまだ低い。
壇上の一段下に立つのはソレン。
檄を飛ばした張本人でありながら、盟主ではない。
血統が、政治を決めた。
「本日ここに、帝国秩序回復連合の結成を宣言する!」
連合艦隊、総数一八〇〇隻。
銀河は再び、内戦へ踏み出した。
評議会。
巨大ホログラムに映るのは戦略図。
帝国軍は要衝――
巨大リング要塞「カルディナ・ゲート」を固めている。恒星重力圏に固定された金属の環。
その内側に艦隊を収め、外周に粒子砲列。
正面突破は困難。
「まずは兵站を整えるべきですな」
名門貴族が言う。
「帝国側の動向を見るのが賢明だ」
商業代表が続く。
ソレンは抑えきれず言う。
「時間を与えれば、敵は強化する」
沈黙。
レグルスは目を閉じ、慎重に言った。
「急ぐ必要はない。連合は始まったばかりだ」
その“慎重”が、のちに重く響く。
カルディナ・ゲート。
漆黒の艦隊が整列する。
先鋒を率いるのは、グナエウス・バルザック。
元鉱山労働者。
戦功のみで将官へ。
重装機動鎧を纏い、艦橋に立つ。
「連合は寄せ集めだ」
低い声。
「恐怖を教えてやれ」
彼は出撃を命じた。
連合側の若手提督が名乗りを上げる。
「我が艦隊五百隻で先鋒を務める!」
勇ましい宣言。
レグルスは頷く。
ソレンは、わずかに眉をひそめた。
カルディナ・ゲート宙域。
リング要塞の影から帝国艦隊が現れる。
整然。
無駄がない。
連合艦が突撃。
だが、次の瞬間、
要塞砲が閃光を放つ。
粒子砲の連鎖。
前列が蒸発する。
混乱。
そこへバルザック艦隊が突入。
接近戦。
白兵用強襲艇が連合旗艦へ。
艦橋で爆発。
若手提督は戦死。
わずか数時間。
五百隻は壊滅した。
廃都に報が届く。
「……壊滅?」
評議会がざわめく。
「やはり時期尚早だったのだ!」
「無謀だ!」
ソレンは拳を握る。
「次は私が出る」
しかし、レグルスは制した。
「焦るな。連合は一度の敗北で崩れぬ」
だが、兵士は違う。
敗北は伝播する。
“帝国は強い”
その言葉が広がる。
辺境アグリア宙域。
難民船団の間で囁かれる。
「カルディナで五百隻がやられた」
「だが、帝国巡洋艦を三隻落とした部隊がいるらしい」
「誰だ?」
「名は……ジーク」
詳細は不明。
傭兵か、流浪の将か。
ただ一つ。
帝国を撃ったという事実だけが残る。
夜。
廃都の塔からソレンは星を見る。
連合は大きい。
だが、重い。
レグルスは正統。
だが、遅い。
兵は強さを求める。
民は勝利を求める。
評議会の若手が囁く。
「必要なのは、決定的な英雄だ」
その言葉に、誰も否定できない。
遠く、カルディナ・ゲートでは、バルザックが静かに報告を受けていた。
「連合は脆い」
彼の視線の先。
だが、銀河は、まだ静かではない。
名もなき星々の間で、新たな名が広がり始めていた。
――ジーク。
まだ、姿はない。
だが、英雄を求める時代が、始まった。
つづく