SF小説 銀河世紀

銀河世紀 第6話

銀河帝国十常院の悪政と陰謀

銀河帝都アストリアは、歓声に包まれていた。

星環調和会を討伐した英雄、
将軍レオニード・ヴァルクが帰還したのだ。

黒銀の装甲を纏った艦隊が軌道上に整列する。
民衆は彼を称えた。

「帝国の盾!」
「ヴァルク将軍、万歳!」

だが、宮廷の奥深く――

十常院の長老たちは沈黙していた。

「民の人気は危険だ」

「皇帝の威光を超えれば、処分せねばならぬ」

彼らは笑わない。

計算する。

十常院は密かに使者を送った。

「戦後復興基金として、相応の献金を」

それは賄賂であった。

レオニードは、即座に拒否した。

「帝国の軍は、民の血で戦った。
 その報酬を宮廷の私腹に入れることはない」

その返答は、死刑宣告に等しかった。

数日後、勅命が下る。

――レオニード・ヴァルク、将軍職解任。

民衆は動揺した。

軍は怒りを抑えた。

十常院は、ほくそ笑んだ。

その直後。

アレクシオス三世が急死する。

公式発表は「持病の悪化」であった。

だが、宮廷では囁かれていた。

――毒。

帝国は震えた。

第一皇子、コンスタンティノス。

温厚で理想を語る青年。

十常院は、彼を擁立する。

「帝国の正統なる後継者!」

だが、第二皇子、ニケフォロスは違った。

軍と接触し、現実を見ていた。

「父の死は、偶然ではない」

彼は、マグナス・リュケオン大将軍と会談する。

帝国軍大将軍で、反十常院の中心人物である。

「腐敗は、切除せねばならぬ」

帝都は、緊張で満ちる。

マグナス大将軍は、決起を準備した。

だが――

その夜。

爆発。

閃光。

彼は、十常院の刺客に倒れた。

帝国の最後の防波堤が崩れる。

軍は分裂。

宮廷は、恐怖に支配される。

その報は、遠く北方の惑星ヴァルディアにも届いた。

ヴァルディア星間軍政侯国。

軍政評議会が集う。

「帝国は揺らいでいる」

「出兵すべきか?」

「静観すべきか?」

沈黙の中、一人の若き軍官僚が立つ。

ソレン・カイロ。

「忠誠とは契約だ」

静かな声。

「契約が守られぬなら、忠誠は再定義されるべきだ」

評議会がざわめく。

「帝国は秩序を失いつつある」

彼は続ける。

「ならば、我らが秩序を作る側に回る」

冷徹ではない。

激情もない。

ただ、確信。

評議会後、側近が報告する。

「辺境宙域アグリアにて、民衆をまとめ上げた男がいると」

「その名は――ジーク」

ソレンは、わずかに目を細めた。

「民心を動かす者か」

しばし、沈黙。

「いずれ会うだろう」

その声には、奇妙な予感があった。

敵意ではない。

理解。

帝都では、十常院が権力を固める。

コンスタンティノスは傀儡となる。

ニケフォロスは、密かに軍を集める。

帝国は裂け目を広げる。

その裂け目の向こうに、
二つの未来が芽吹いていた。

精神の革命。

制度の革命。

まだ、交わらぬ二つの意志。

だが、銀河は知っている。

やがて、彼らは出会う。

そして、共に戦う。

だが、決して同じ道を歩まぬことを。

銀河帝国十常院の悪政は、
新たな時代の扉を開いてしまった。

静かに。

確実に。

銀河の運命は、動き出した。

つづく

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